「施工者の思い込みがないか、現場での様々な視点からのチェックが重要」──。愛知県で設計事務所を営むIさんは、これまでの経験からこう語った。
自分が設計・監理する建築現場では、構造や雨仕舞いに関連する重要な部分の作業に立ち会うようにしているというIさん。その現場で、Iさんの考え方ではダメな、いわゆる“NG施工”に遭遇することが少なくない。施工者がなぜ、そして、どのような施工をするのか。Iさんの事例を通して、設計・監理者と施工者の間で生じる考え方の違いを探った。NG施工の防ぎ方はそれぞれの住宅会社に適した方法があるはず。Iさんの事例などから、その方法を見つけ出す参考にしてほしい。
思い込みの“標準”方法
上の写真は、電気工事専門会社が施工した事例だ。構造材となる柱にドリルで斜めに穴を貫通して、電気ケーブルを室内側から室外側へと通していた。下の写真は、土台を切り欠いて床下にプラスチック製の電線管を配線した例。Iさんの場合は、特にこれらの施工を厳しく対応している。柱や梁の性能は本来、欠損がない状態を前提に考えるべきものだからだ。
NG施工をした施工者に原因をヒアリングした内容などから、「悪気がないことが多い」とIさんは分析する。例えば、他の建築現場で体験した応急的な施工方法を、“標準の方法”と思い込んで次の現場でも使ってしまうケースだ。施工者は正しい方法だと思っているので、別の方法を大工などに相談するという発想に至らない。
大工や専門工事会社の担当者でも、同様のケースが考えられる。例えば、メーカーの標準施工仕様の一部改訂に気が付かず、いつも通りに施工。だが、従来の方法が新たにNGの方法となっていたといった具合だ。「前の現場ではこのやり方でOKだった」という思い込みは、新たな情報や変更点を見落とす要因のようだ。
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