厳しい雇用情勢、円高傾向とデフレで、中小企業全体に危機感が高まっている。27日には、全国商工団体連合会(全商連)など30の全国中小企業者団体が、「円高・デフレ危機突破」をスローガンに、東京都千代田区の日比谷公会堂で総決起大会を開くと同時に、霞が関、国会へデモ行進した。一方、政府も最低賃金引き上げを視野にした検討チームを28日に立ち上げるなど全労働者の生活維持へ向けた施策展開を開始した。決起大会では、民主党が打ち出していた中小企業いじめ防止法制定などを決議した。政府の最低賃金引き上げ議論では、負担増となる中小企業支援策が対象になる見通しで、中小企業保護を視野にした政策論議が今後強まる可能性が高そうだ。
中小企業全体に、現在の環境に対する危機感が強まっているのは、日本経済が景気後退期から景気の底入れ・持ち直しという循環的回復期を迎えた現在、この先の自律的回復に向かうために必要な、設備投資増と所得改善や消費回復の兆しが見えないことがある。
特に低迷傾向時であっても年度後半には高まっていた中小製造業の設備投資動向も、「今年度は異例の下方修正」(第一生命経済研究所の嶌峰義清主席エコノミスト」と、中小企業の疲弊が懸念されていた。
27日の総決起大会でも、金型製造業の国分稔全商連会長は、「経済対策の効果は一部業種の大企業だけで、中小企業は年金・貯金を取り崩して経営するなど、本当に崖っぷちに追い込まれている」とした上で、「中小企業いじめ防止法制定には大きな期待を寄せている」と訴えた。
中小企業いじめ防止法制定は、政権交代前に民主党が打ち出しているもの。与党政策会議でも、今通常国会に提出する予定の独占禁止法案に関連して、下請けいじめ防止を目的にした新法を求める声があがっていた。
総決起大会には毎回、共産党議員が参加するなど、共産党支持色が強いが、今回初めて自民党議員も出席、「反省すべきは反省する。中小企業の活力なくして日本の活力はない」との発言に、会場からはどよめきが起こった。
建設関係からも中小・零細団体が参加、「中小向け発注の拡大、官公需法適用の拡大を求めていきたい」と発言した。
一方、政府は、厚生労働、経済産業の両省が、最低賃金の引き上げに関する検討チームを設置することを決め、28日に初会合を開く。両省の副大臣と部局長クラスで構成、地域や業種ごとの課題を探るため、4月から調査を開始する予定。
また引き上げによる経済や雇用への影響のほか、労働者の賃金引き上げによって負担が増加する中小企業に対する支援策も議論する見込み。
最低賃金引き上げについて、建設業関係では、民主党や社民党のほか共産党などの支持色が強い一人親方などが加盟する建設関係組合がこれまで強く求めてきた、公共工事に携わる労働者の最低賃金を規定する公契約法制定の前段として、千葉県野田市が公契約条例を制定するなど、新たな動きが進み始めている。
さらに政府は27日、より地域に密着した政策を進めるため、「新しい公共 円卓会議」を発足させている
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