シロアリ被害 / 日経BP

主に不同沈下対策としてベタ基礎を採用する住宅会社は多い。ベタ基礎はシロアリ被害の軽減効果をもたらした。イエシロアリやヤマトシロアリといった地中に巣を張る「土壌性」のシロアリが、物理的に侵入しづらくなったのだ。

 ところが、それでもなお頻繁に食害が生じる部位がある。それが玄関だ。引き渡し後数カ月から1年で食害が判明、住宅会社が補修を余儀なくされた例がいくつもある。

 まずは実際の被害例を写真で見ていこう。上の写真は食害を受けた玄関框を横からアップで撮影したものだ。これはイエシロアリによるもの。木材の年輪には「夏目」と「冬目」があり、前者のほうが柔らかい。イエシロアリは柔らかい部分だけを好んで食べたようだ。

 この事例は千葉県銚子市に建築された一戸建て木造住宅で確認された。写真を見る限りでは老朽家屋を想像してしまうが、被害が見つかったのは引き渡しからわずか半年後だった。

 下の写真もやはり玄関框の被害例だ。食害が発見され、その補修中に撮影された。これはヤマトシロアリによるものだ。被害が発見されたのは引き渡しから1年後だった。

 掲載したのは、被害例のほんの一部だ。築浅住宅での玄関のシロアリ被害は非常に多い。これにはわかりやすい理由がある。

引き渡し直後から玄関が食害を受ける理由

資料提供:近江戸征介、イラスト:笹沼真人

 上の図は、一般的な玄関まわりの模式図だ。玄関のたたきは外部のポーチとほぼ同じ高さで、ポーチと同様にタイル仕上げなので、下地として土間コンクリートを打つ。ただし土間コンクリートは主要構造部の基礎ではない。基礎の底盤を打設した後、ポーチから玄関のたたきまでをいったん土で埋め戻し、その上に無筋で打設する。この下の埋め戻し土が、シロアリには格好の侵入経路になってしまうのだ。

 こうした被害例の観察に基づき、城東テクノ顧問の近江戸征介さんは、玄関框が食われる理由となっている部分を物理的に切り離す方法を提案する。近江戸さんによると、この対策で被害が再発した例はないという。

 さらに施工における注意も重要な対策だ。木造の建築現場には木くずやおがくずが付き物だが、それらを掃除せずに放っておいたり埋め戻しの際に混ぜてしまったりすると、その木くず・木粉がシロアリを呼び寄せる「餌木」になってしまう。シロアリ対策は設計・施工のどちらが欠けてもうまくいかないのだ

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