1970年代前半に施工された道路トンネルで、アーチ部の覆工コンクリートが50cm×50cmにわたって落下した。築後30年近く経過し、ひび割れなどのコンクリートの経年劣化が認められた。崩落前に実施した点検でも「詳細調査が必要」と指摘されていた。また、崩落した覆工の背面を見ると、大きな空洞ができていた。
このトンネルは、NATM工法が普及する前に、鋼アーチ支保工と木矢板で地山を支持しながら掘削する在来工法で施工された。施工当時は一般的な工法だった。トンネルの覆工が崩落したのはなぜだろうか。
在来工法で施工したトンネルは、覆工の背面に空洞が残る場合が多い。地山は比較的硬い砂岩や泥岩が互層状になった岩盤だが、崩落した付近は破砕質で覆工の背面には多くの崩壊したれきがたまっていた。このことから、崩壊した地山の岩盤が、覆工の崩落を招いたと考えられる。さらに、支保工や矢板の腐食、覆工コンクリートの厚さ不足や劣化などの要因も重なったとみられる。
(芙蓉コンサルタント常務取締役 須賀 幸一)
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