下請債権保全支援事業の利用会社が急増 / 建設工業新聞

下請建設会社の資金需要が一段と増している。国土交通省によると、下請建設業者が持つ元請向け債権の買い取りを支援する「下請資金繰り支援事業」(09年7月~10年3月)を利用した下請建設会社が延べ455社だったのに対し、今年3月に創設された元請向け債権の支払い保証を支援する「下請債権保全支援事業」を利用した会社は11月末時点で延べ1340社超となり、同じ9カ月間で利用会社の数が大きく増えていることが分かった。民需低迷と公共工事の減少による受注競争の激化から経営が厳しくなる下請建設会社は多く、国交省が下請債権保全支援事業に予算を上積みした10年度補正予算の年内執行が急がれている。
 下請資金繰り支援事業を利用して買い取られた債権の総額は約76億円3900万円(債権数1461件)だった。下請債権保全支援事業を利用した支払い保証の総額は約160億円(債権数3400件)。利用者数、債権数ともに下請債権保全支援事業が下請資金繰り支援事業を大幅に上回り、今年に入って資金調達を急ぐ中小企業が増えていることが分かる。
 11月の建設業者の倒産(東京商工リサーチ調べ)は前年同月比5・1%減の275件で、17カ月連続で前年同月を下回っているが、減少幅は3月(4・4%減)に次ぐ今年2番目に低い水準。民需低迷と公共工事の落ち込みの中で、元請け間の受注競争は官民工事ともに激しく、下請建設会社への資金面でのしわ寄せも懸念される。こうした状況下で、政府は、民間金融機関の中小企業向け融資を信用保証協会が全額保証する「景気対応緊急保証制度」を、零細企業を除いて来年3月末に打ち切る方針を決定。同制度の2年以内の元金据え置き期間の猶予が11月以降に期限を迎えることもあり、中小企業の資金調達環境は日増しに悪化しつつある。
 国交省は、10年度補正予算に中小企業対策として下請債権保全支援事業(32・4億円)の延長・拡充を盛り込んだ。国交省は当初、年明けから新たな内容で運用する方向で検討していたが、下請建設会社の経営・雇用の安定と連鎖倒産防止の観点から年内の執行実現に向けて財務省と調整を進めており、早期に結論を出したい考えだ。

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