下請建設業者の元請向け債権の支払い保証を国が支援する「下請債権保全支援事業」の利用件数や保証額が急増している。国土交通省によると、3月の保証債権数は1005件、保証総額は48億1400万円、利用した企業は383社で、いずれも過去最高。国交省が昨年末に実施した保証対象となる元請企業の要件緩和や、新たな保証方式の導入によって使いやすさが増したことが増加の一因とみられる。東日本大震災で元請が被災して下請代金が支払い不能になる可能性があった保証債権も順調に支払われ、下請企業のセーフティーネットの役割を果たしていると同省はみている。
下請債権保全支援事業は、下請建設業者がファクタリング(売掛債権買い取り)会社から元請向け工事代金債権の支払い保証を受ける際の保証料などを国が支援する仕組み。国交省が厳しい経営環境にある下請建設業の資金繰りの円滑化を図るために昨年3月に創設した。国交省は資金繰りが厳しい建設業者を下支えするため、昨年12月末に支援内容を一段と拡充。保証対象となる元請企業の要件緩和と、新たな保証方式の導入をそれぞれ開始した。これにより支援を受けられる企業が2倍程度に広がった。手形の交付や支払い請求・通知の段階に加え、下請工事契約の締結段階でも保証の申し込みを行える形にした。
この結果、今年1月に入って保証債権数や保証総額、利用企業数が前月値を更新。2月にはすべての都道府県に制度利用が広がった。今年3月までの13カ月間の累計の保証債権数は6602件、保証総額は319億3200万円、利用企業数は2605社。3月の保証債権数は1005件で、単月で1000件を突破したのは運用開始以来初めて。
3月11日の東日本大震災発生後、元請が被災して支払い不能になる可能性のある保証債権は80件(総額4億円程度)あったが、4月18日時点で60件(同2億4000万円程度)に減少。国交省が下請への支払いが滞ることがないよう、ファクタリング会社などに保証債務の履行に積極的に応じることを求めていることが奏功しているようだ。
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