2011年、設計事務所や建設会社にとっての顧客企業が、IFRSへの対応を本格的に始める。これまで、顧客企業でIFRSを意識していたのは主に経理部門だった。今後は、読者が接する機会の多い事業担当者が、IFRSを踏まえた行動を取るようになる。
IFRSの導入が進むと、保有不動産の価値の変動が、企業の経営により大きなインパクトを与えるようになる。IFRSの会計基準では、ある期における資産の増減として損益を算定するからだ。
具体的には、「期末純資産」から「期首純資産」を差し引いた額を「包括利益」と規定する。純資産には、その期に上げた利益を含めるため、包括利益はその会社の資産の増減を考慮した利益ともいうことができる。従来の日本の会計では、収益から費用を差し引いた利益を主な会計基準としていた。利益には、資産価値の変化は大きく影響しなかった。
多くの顧客企業にとって、資産の大半は不動産である。IFRSの導入が進むと、顧客はこれまで以上に不動産価値に敏感になる。このことを意識すべきだ。不動産価値の変動が、本業の利益や利益率を圧迫するケースも考えられる。
利益構造の変化によって、保有資産の情報が経営の判断指標へと変わる。より実態を反映した、保有不動産の価値や状況の把握が求められる。その情報は施設管理課といった担当部門だけのものから、事業や経営に直結する情報に変わる。保有不動産の再評価と取捨選択を進めざるを得なくなるケースも出てくる。
日経アーキテクチュア4月25日号では、各社の取り組みの実例を交え、変化に対応するヒントを紹介している。
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