住宅エコポイント初体験 内窓の施工は1時間? / 日経ホームビルダー

 「内窓の取り付けは完了です」と作業者は告げた。“手軽なリフォーム”とは聞いていたが、想像していた以上にあっさりと作業が終わり、正直拍子抜けしてしまった。内窓を取り付ける断熱改修は、1窓当たり1時間程度で終わるという各メーカーのうたい文句は、筆者のケースでは本当だった。

 住宅エコポイントの対象として注目を集めている内窓。手軽にできる断熱改修なだけに、気になっている住まい手も少なくない。ただ、「本当に取り付け工事は簡単に終わるの?」「取り付けてどれくらい効果があるの?」といった疑問を抱き、リフォームへの一歩が踏み出せないという住まい手がいるという話も聞く。

 日経ホームビルダーの記者が自ら内窓の断熱改修リフォームを体験し、その実態に迫る体験レポートの第4回。今回は、少し時間を巻き戻して、内窓の施工に至るまでを紹介する。どのように製品を選び、どのような工程を通じて、リフォーム工事が行われるのか――。住宅エコポイントの利用の流れをレポートした「住宅エコポイント初体験(1)」「住宅エコポイント初体験(2)」「住宅エコポイント初体験(3)」と併せて参考にしてほしい。

 2月下旬、筆者は自宅であれこれ頭を悩ませていた。住宅エコポイントの体験レポートを作成するに当たり、まずはリフォームで取り付ける内窓の製品を選ばなくてはならなかったからだ。だが、どう選べばよいか、見当が付かない。そもそも、どんな製品があるのか――。まずは主な製品を探すことから始めた。

 住宅エコポイントの対象となる内窓の製品一覧は、住宅エコポイント事務局の公式ページで閲覧できる。例えば、旭硝子、三協立山アルミ、新日軽、大信工業、トステム、メルツエン、YKK APなどのメーカーが対象の内窓を販売している。

 これらのメーカー別にみて、製品の違いはあるのだろうか。カタログやウェブページなどの情報を見てみたが、あまり製品の違いが分からなかった。「最近はメーカー間に性能などの大きな差はなくなった」と、ある建材・設備メーカーの関係者がつぶやいていたことを思い出した。専門知識を持たない住まい手には、製品の差を見極めることは難しいようだ。

 そこで今回は、内窓のリフォームを依頼する工務店の担当者に相談しながら製品を選び、取り付けることにした。なお、内窓製品の比較検証は、日経ホームビルダー「とことん実証!建材・設備」のコラムで数回に分けて掲載する予定なので、詳細はそちらを参照していただきたい。

2回の打ち合わせで発注
 内窓の施工は、創建舎(東京都大田区)に協力してもらった。同社は東京の城南地区を中心に、新築やリフォームを手掛ける工務店だ。内窓の取り付けやガラス交換といった断熱改修の経験もある。早速、内窓の取り付けについて担当者と1回目の打ち合わせを実施した。

 初回の打ち合わせでは、カタログを見ながら内窓について説明を受けた。創建舎の場合、新築などで取り扱いがある内窓メーカー2社のカタログを用意して説明を始めた。住まい手の要望があれば、普段扱わない内窓メーカーの製品を取り寄せ施工するが、扱い慣れたメーカーをベースに説明する工務店は少なくないようだ。製品選択はしばらく悩むとして、次の打ち合わせの日程を決め、この日は終了した。

 日を改めた2回目の打ち合わせでは、内窓を取り付ける窓の額縁を採寸することからスタートした。創建舎の担当者と一緒に現れたのは、小田川トーヨー住器(東京都大田区)の営業部の福島辰彦さん。レーザー光線で距離を測定する機器を使い、額縁の採寸を始めた。

 「住宅エコポイントの効果で、内窓施工が増えることを見込んで、採寸の効率化のためにレーザー計測器を導入した」と福島さん。従来はコンベックスで計測していたというが、大きなサイズの窓は1人では測りにくいもの。コンベックスを支えながら目盛りを横目で見るなど正確に測るのが難しいケースもあり、測り直しなど手間がかかることもあったという。レーザー計測器を使えば、1人でも「5分程度で額縁のサイズを採寸できる」(福島さん)という。

 さらに福島さんは、額縁の幅や既存窓のクレセントの高さなどを測定した。内窓を取り付けたときに、外窓が開かなくならないように、余裕をみることも必要になるという。これらの寸法を基に、内窓をメーカーに発注する流れだ。

搬入経路の確認も重要

 採寸した後、今度は搬入経路の確認だ。腰窓などでは問題になることは少ないが、大きめの掃き出し窓を2階などの部屋に取り付ける場合、廊下や階段を内窓の障子が搬入できないことも考えられる。搬入経路を通るサイズだったとしても、壁にぶつからないように確認しながら運び込まないとならないなど、作業効率を考える必要もある。このときに、施工当日の作業員を1人にするか2人にするかなどの見当を付けるようだ。

 今回の施工場所は、地下にある部屋の掃き出し窓だ。取り付ける内窓は、厚さ5mmの単板ガラスを使用した引き違い窓で、サイズは幅2226mm、高さ1903mm。階段の高さなどを測りながら福島さんは「内窓の障子のサイズが少し大きいので、階段を通して搬入するのは難しい。ドライエリアから搬入した方がよい」と説明した。

 これで2回目の打ち合わせは終了。あとは、製品を選び、施工日程を決める。内窓は施工する既存の窓のサイズに合わせた、いわゆるオーダーメイド方式なので、発注してから納品まで数日かかる。発注した翌日すぐに取り付けられるというものではないので注意したい。

搬入が最大の難関

 施工の当日、筆者の自宅の前に障子を積んだ1台の軽トラックが到着した。時刻は朝の9時30分。早速作業を開始した。

 作業員は2人。まずは階段を通しての搬入経路を確認した。2回目の打ち合わせ時に「階段を使った障子の搬入は難しい」と福島さんは判断していたようだが、念のため当日に再度確認したという。階段を通して搬入できれば作業も早いのだが、残念ながら「やはり無理」という判断が下された。

 室内に入り、施工場所を確認。取り付ける額縁の状況などをチェックした後、施工の準備に取りかかった。床が傷付かないように養生用の布を敷き、工具を搬入。作業員の2人はきびきびと動く。さらに2人は作業を進める。内窓を取り付ける額縁に縦枠と横枠を仮に設置して、発注した寸法などに間違いがないかを確かめた。

 いよいよ内窓の取り付け開始だ。内窓は、枠と障子で1セットだ。障子はガラスをはめ込んだ状態で現場に持ち込まれるが、枠は現場で取り付ける。縦枠が2本、横枠が2本の合計4本で1組になっている。電動式のドライバーを使って内窓の枠をビスで留め付ける。新築の工事現場のように、「ガガガガガ」と音を立てながら力強くビスを締めるかと思いきや、「キュルキュルキュル」と緩やかに締め付けた。作業は意外と静かに進んだ。後で確認したところ、枠を取り付ける際のビスを締める力(トルク)は、メーカーの推奨値がある。ビスを締める力はあまり強くないため、施工時の音はそれほどしなかったようだ。

 枠の取り付けは、準備を開始してから約30分程度。実際に取り付けている作業時間は10分程度だった。枠が完成した後、作業員の2人は障子の搬入作業に移った。取付場所となる地下の部屋に、障子をドライエリアから搬入するための準備をするが、これに苦戦。ドライエリアは、1階から人が転落しないように金属製のグレーチングでふたをしていた。このグレーチングを外し、障子を搬入するスペースを確保するのだが、なかなかグレーチングが外れない。

 約30分かけてようやく取り外し、搬入経路を確保した。障子の搬入自体は5分程度で、あっさり完了した。階段を使って障子を運べていれば10分程度で搬入作業は完了していただろう。施工する場所によっては、今回のように障子の搬入に時間がかかってしまうこともあるようだ。

 障子を搬入した後、施工した枠にはめ込む。戸車を調整し開閉の様子やすき間が生じていないか、クレセントの閉まり具合は大丈夫かなどを確認した。最後に、取り付けた内窓のガラスを清掃して終了。引き渡しとなった。この間は約20分だった。

 こうして、朝の9時30分にスタートした内窓取り付け工事は、約1時間で終了した。途中、搬入経路の確保に時間がかかったが、それ以外の作業はスムーズに進んだ。今回の内窓リフォーム費用は、製品の金額を含めて約10万円。申請して受け取った住宅エコポイント数は1万8000ポイントだった。「障子の搬入に手間が発生したが、作業員が1人で済む場合などは、費用が少なく済むこともある」と創建舎の亀山奈緒子さん。施工枚数などの条件によって異なるが、内窓リフォーム費用の2割程度が、住宅エコポイントとして受け取れる計算だ。

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