住宅版エコポイント制度は、一定の省エネルギー性能を満たす住宅の新築や、省エネを促進するリフォームに対し、ポイント(1点が1円に相当)を付与する制度だ。対象は、戸建てやマンションなどの住宅で、持ち家だけではなく、賃貸も含む。補正予算の成立日以降に工事が完了し、引き渡された物件という条件だ。
新築住宅では、非木造住宅の場合、省エネ基準を満たし、高効率の給湯機器を備えるなどして、省エネ法で設定する住宅の目標基準(トップランナー基準)に相当すると認定してもらう必要がある。木造住宅の場合は、省エネ基準を満たせばよい。
リフォームでは、二重サッシ化や複層ガラス化といった窓の断熱改修、外壁や天井、床の断熱材の施工が対象になる。併せて、段差解消などのバリアフリー改修をした場合は、ポイントを上乗せする。
国土交通省、経済産業省、環境省は12月15日、ポイント付与の対象となる新築住宅の着工時期の条件について、「09年12月8日以降の着工に限る」と発表した。12月8日に追加経済対策を閣議決定した際は「10年1月1日以降の着工」としていたが、年内の住宅着工を促す狙いから前倒しした。
新築は30万円程度を還元
住宅版エコポイント制度は、菅直人副総理・国家戦略担当相が提唱した。前原誠司国交相は11月20日の会見で、「例えば国内材の需要振興、ひいては林業、大工、工務店の仕事が増えるというのは素晴らしいこと」と、経済効果の波及に期待感を示している。
付与するポイント数は検討中だ。国交省住宅生産課によると、新築戸建て住宅は一律に戸当たり30万ポイント程度、リフォームなら窓10カ所の断熱改修で15万ポイント程度とする見込み。商品券やプリペイドカード、地域振興券や地域産品、省エネ・環境に配慮した商品などと交換できるようにする。国交省は、発行ポイントが大きくなることから、家電エコポイントの対象製品やサービスをベースに、交換対象の種類を増やす方針だ。
一方で、制度の運用に向けた課題も残る。家電製品とは異なり、住宅は現場での施工を伴う。対象住宅が環境配慮型になっているのを、どのように確認するか。前原国交相はリフォーム詐欺などを例に挙げ、「不正な申請を防止するためにどのようなチェックをしていくか、悪質な業者によるトラブルを、いかになくしていくかが検討課題」と述べている。
制度の使い勝手を良くしつつ、不正を防止するチェックシステムを構築する――。国交省は制度運用の詳細を慎重に検討している。国交省住宅生産課の宿本尚吾企画専門官は、「既存の制度をベースに、いかに簡便な手続きで済むようにするか。問題が発覚した場合に追跡できるようにする最低限の申請書類は必要だ。抜き打ちのチェックのようなことも考えている」と語る。
新築の場合、住宅性能評価機関などが省エネ性能を評価し、「エコポイント対象工事証明書」を発行する仕組みを想定している。現行の省エネ法には戸建て住宅に関するトップランナー基準はあるが、共同住宅にはない。このため、共同住宅に関するトップランナー相当の基準も作成する方針だ。リフォームの場合のチェック手法は検討中だ。国交省は詳細を詰め、年内にも公表する予定だ。
住宅版エコポイント制度の創設について、住宅関連業界には歓迎ムードが漂う。だが、消費刺激は簡単ではない。住宅は設計や施工に時間を要するため、省エネ家電やエコカーとは異なり、短期的な需要創出効果は期待薄との見方もある。制度の運用次第では、消費者の関心が離れ、関係者が盛り上がるだけということになりかねない。エコ住宅が大きな柱になり得るか、関連業界や企業の今後の取り組みにもかかってくるだろう。
住宅版エコポイント制度が一定の成果を上げれば、エコ住宅の普及が本格化する可能性がある。景気対策としての環境政策が有効になることが明確になれば、環境関連の法規制、あるいは減税や補助金といった政策が打ち出される公算が高い。環境規制は、負担増というマイナスがある一方、新たな需要を生み出すきっかけにもなる。建設産業にとって、大きな市場になる可能性を秘めている。
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