健康診断を受けないと万一のとき不利に? / プレジデント

皆さんがお勤めの会社で、年に一度受けるよう促されるのが、定期健康診断である。「面倒だ」「自分は大丈夫」と、受診をおっくうがったり、医師の指示に従わないでいると、もしものときに、不利になってしまうかもしれない。

今回は、健康診断を受けずに残業を続けているうちに、激務による過労で脳梗塞などで倒れた場合を想定して、問題を提起したい。働けなくなり、毎月の収入が途絶えたら、その後、自分や家族をどのように養っていけばよいのか。

まず考えられるのは、労働者災害補償保険(いわゆる「労災」)の適用を申請し、仕事を休んでいる期間の給与分を確保する手段であろう。その前提として、「労働災害」の定義を確認しておきたい。

労働災害とは、業務上の事由または通勤の途上で、負傷、疾病、障害、死亡する事態のことを指す。そして、その疾病が「業務上の事由」によるものといえるためには、(1)業務遂行性、(2)業務起因性の要件を満たしていなければならない。

業務遂行性は、最高裁の判決や行政庁の解釈によれば「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」と定義されている。

就業時間内はもちろん、業務の前後に準備や後片付けをしている時間帯、休憩などの自由時間も「事業主の支配下」だと話すのは、労災の問題に詳しい中町誠弁護士(第一東京弁護士会)。また、営業での外回り中や、遠方への出張中、持ち帰り残業中も「事業主の支配下」に含まれるという。

次に、業務起因性と呼ばれる要件が問われる。これは「業務がなければ疾病もなかった」という結びつき(条件関係)が満たされるだけでは不十分である。

業務以外に疾病を引き起こしかねない要素(持病、私生活での喫煙習慣などの不摂生など)と比べて、業務の要素が相対的に有力でなければ、業務起因性は認められない。

前出の中町弁護士の説明では、残業時間が、月に80時間以上にまで達していれば、業務起因性が推定されるという。

よって、その疾病が、遂行中の業務に起因したと認められれば、労災が下り、休業補償などとして給料の8割が支給されることになる。ここまでは、健康診断を受けているかどうかは問題にならない。

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