生物多様性が重視されるなかで、今後、保全や創出に関連する業務や工事は増える可能性がある。一方で、実際の現場では、まだまだ生態系への配慮が足りず、トラブルが頻発している。
トラブルを防ぐには、最低限の生物の知識と、保全しようとする意識が欠かせない。日経コンストラクション10月8日号の特集「生物多様性との付き合い方」では、ありがちなトラブルを示しながら、やってはいけない事柄をまとめた。工事編と計画・設計編から1例ずつを紹介する。
[工事編]外来種を吹き付けて工事やり直し
禁止された外来種を施工会社が法面に吹き付けたところ、発注者から工事のやり直しを命じられた。「周囲の在来種を絶滅させる恐れがある」と判断した。結局、工期は延長し、追加工費も施工者が負担した。
こうしたトラブルは少なくない。2005年6月に施行された外来生物法は、植えたりまいたりすることを禁止した「特定外来生物」を定めている。これらを吹き付けるのは論外だ。また、規制はされていないが生態系に悪影響を及ぼす恐れがある「要注意外来生物」も指定している。最近の公共事業では、要注意外来生物も極力使用しない方針を掲げている工事があるので、発注者との事前の確認が欠かせない。
[計画・設計編]動物が使わないアンダーパス
雑木林を横断する道路が小動物の移動を妨げるとして、施工者は盛り土構造の道路の下部に、小動物の移動経路確保のためのアンダーパスを造った。しかし生態の調査不足で、アンダーパスで移動する小動物は皆無だった。
移動経路を絶たれた小動物は生息数が減ってしまった。こうしたアンダーパスなどを設置する場合は、事前の入念な調査が欠かせない。計画時から生物の専門家を交えた検討を十分に実施し、足跡や食痕の追跡やモニタリングを通じて移動経路を調査すべきだ。