希少金属、都市鉱山狙い 三菱マテなど回収事業強化 / Sankeibiz

非鉄金属大手が「都市鉱山」と呼ばれる廃家電などに含まれるレアメタル(希少金属)を回収・再利用するリサイクル事業を強化している。三菱マテリアルがレアメタルの一種であるレアアース(希土類)回収事業への参入を目指すほか、三井金属やDOWAホールディングスなどもレアメタル回収を増強。各社とも“発掘”に懸命だ。省エネ家電やハイブリッド車(HV)に欠かせないレアメタルは世界的に争奪戦の激化が確実視される一方で、日本の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する埋蔵量を持つだけに、「宝の山」を生かし切れるかが日本の産業競争力の鍵を握る。

 ◆HV用など安定調達

 三菱マテはパナソニックとの合弁会社「パナソニックエコテクノロジー関東」(茨城県稲敷市)で、使用済みエアコンの圧縮機からレアアースを取り出す実証試験を始め、2014年までに事業化したい考えだ。レアアースはHVや電気自動車(EV)のモーター用磁石などに使われる。レアアースの産出は中国が世界の9割以上を握るが、中国は輸出抑制に傾いており、将来的に需給逼迫(ひっぱく)の懸念もあるだけに、同社は「安定調達につなげたい」と意気込む。

 三井金属はHV用などのニッケル水素電池からレアメタルを回収・再利用する事業を増強する。電池処理量を現在の月数十キログラムから4~5年後には10トン規模まで引き上げる方針だ。11年度をめどに使用済みリチウムイオン電池からリチウムなどを取り出す事業を始めるのが日鉱金属。子会社の日鉱敦賀リサイクル(福井県敦賀市)内に実証プラントを建設中だ。リチウムイオン電池は現在の携帯電話やノートパソコン向けだけでなく、HVやEV用途も増える見通し。DOWAホールディングスも傘下の小坂製錬が運営する小坂製錬所(秋田県小坂町)で使用済み家電や携帯電話から金、銅、レアメタルなど約20種類の金属を回収しており、その対象を増やすことも検討している。

 ◆ほぼ全量輸入頼み

 レアメタルは産出国がロシアや中国、アフリカなどに偏り、日本はほぼ全量を輸入に頼る。その調達には産出国の政情や資源政策に左右される不安はぬぐえないため、日本企業は海外鉱山の開発や権益確保などを加速。政府も石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と企業が鉱山に共同出資できるよう法改正し企業を後押しする構えだ。ただ、資源の「爆食国」中国などライバルも多く、権益取得は簡単ではない。

 一方、物質・材料研究機構によると、国内都市鉱山のレアメタル埋蔵量はインジウムが世界埋蔵量の61%、リチウムは世界の年間消費量の7倍以上に相当する。レアメタルは日本のハイテク製品に不可欠な原料だけに、都市鉱山の活用は待ったなしだ。(本田誠)

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 ≪野村総合研究所社会システムコンサルティング部コンサルタントの駒村和彦氏≫

 ■苦戦する海外権益獲得戦

 近年、資源メジャーの寡占化などで調達不安が高まっている。特に今後の製造業に不可欠なレアメタルでこの傾向が顕著だ。日本企業は資源権益の獲得に動いているが、苦戦を強いられている。

 その要因は主に2つ。1つは資源の大量消費国の座を中国に奪われたこと。従来、日本は大量消費国として長期買い取りを確約することで資源開発に参加して権益取得に結びつけてきたが、今やこうした優位性は見いだしがたい状況にある。

 もう1つは資金面での日本の魅力が薄れたこと。資源開発には膨大な資金が必要だが、日本だけでなく中国などが資金の出し手として浮上し、資源国との交渉の主導権が握りにくくなっている。

 調達不安の解消には、レアメタルに代わる資源の開発、省資源技術の開発、都市鉱山の活用が必要になる。都市鉱山については、金属を効率的に抽出する技術の開発や使用済み製品の回収網の整備などが課題だ。

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