戸建住宅の改修では、クライアントから「住みながら工事が進められないか」と相談を持ちかけられることが多々ある。結論からいうと、これはきっぱり断ったほうがよい。
実際に解体工事が始まるとすぐに分かることだが、解体時の音とほこりは、そこで生活をしながら受忍できるレベルのものではない。そのうえ、工事中は戸締まりが完全にできなかったり、工事用の簡易な扉に替えて進めたりすることもあり、防犯上も問題がある。住みながらの工事は可能な限り避けるべきだ。
つまり、工事期間中はクライアントに別の場所で仮住まいしてもらうことになるわけだが、その際にちょっとした工夫で感謝されることがある。空き部屋の活用だ。我々の事務所では、既存建物に解体しない部屋がある場合、その部屋の中に竣工後に使う家具などを入れて、部屋全体をラッピッングするように養生してしまう。
空き部屋を一時的な納戸にするわけだ。これは養生することで既存建物の柱やかまちの損傷を防ぐ目的もある。
一時的とはいえ家具まですべて引っ越し先に運んだり、他の場所に預けたりすることはクライアントにとっては大変な労力となる。当面必要のない家具だけでも置いておくことができれば、精神的にも費用的にも負担は軽くなる。この配慮は意外なほど喜ばれる。
日経アーキテクチュア7月10日号の「戸建住宅改修のツボ第5回:改修の施工、4つの心得」では、このほか、解体時の仮補強や構造補強後の再調査の重要性などについて解説している。
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