板目で価格を抑えた木建具 / 日経BP

ムク製建具は柾目でつくるのが一般的だ。柾目は木目が平行に並び、きれいで反りにくいからだ。しかし、柾目を取るには大径木が必要で、歩留まりが悪い。材料が高いため、建具も高級品になる。

 守谷建具店(埼玉県所沢市)は、国産材の板目を使うことで、ムク製建具を格安に提供している。

 扉のみの出荷価格は、幅が600~900mm、高さが2000mm前後の中桟入りスギ扉が2万6000円から、ヒノキ扉が3万4000円から。一般的な建具価格の3分の2以下で、寸法は注文対応だ。

 「板目を使えば価格を安く抑えられるうえ、小径木の国産材活用にも貢献できる」。社長の守谷和夫さんは、板目でつくる理由をこう話す。

 反りや狂いを少なくするために講じる対策の一つは、部材を2枚重ねにすることだ。もともと反りのある板は二枚に割り、芯に近い「木裏」のほうを内側にして接着剤で張り合わせる。反りを殺し合うことと、節を内側に隠す一石二鳥を狙う。

木裏を内側にして2枚重ねにした框をダボで組む。ダボの本数を4本に増やして座屈しにくくしている。接着剤はホルムアルデヒドを使用しない酢酸ビニル系を使用。接着剤の使用を望まない人には、十分乾燥させた反りの少ない1枚板で製作する(写真:日経ホームビルダー)

木裏を内側にして2枚重ねにした框をダボで組む。ダボの本数を4本に増やして座屈しにくくしている。接着剤はホルムアルデヒドを使用しない酢酸ビニル系を使用。接着剤の使用を望まない人には、十分乾燥させた反りの少ない1枚板で製作する(写真:日経ホームビルダー)

 

建具に使用する人工乾燥した無節材を屋外で天燃乾燥している様子。柾目は平行に木目が並ぶのに対し、板目は横長の円を描く(写真:日経ホームビルダー)

建具に使用する人工乾燥した無節材を屋外で天燃乾燥している様子。柾目は平行に木目が並ぶのに対し、板目は横長の円を描く(写真:日経ホームビルダー)

 

実(さね)でつないだ鏡板。変形を吸収するため、継ぎ目に接着材は使わない(写真:日経ホームビルダー)

実(さね)でつないだ鏡板。変形を吸収するため、継ぎ目に接着材は使わない(写真:日経ホームビルダー)
 
部材の乾燥方法に工夫

 もう一つの工夫は乾燥方法。守谷さんは張り合わせた部材を屋外に約1年間置いて風雨にさらした後、いったんプレーナーをかける。

さらに、室温が70~80℃まで上がる2階の倉庫にひと夏寝かせ、もう一度プレーナーをかけて最終寸法に整える。温湿度の差が厳しい環境に置いて、反りなど部材の“癖”をできるだけ早く出して、取り除いてしまうのだ。 

 それでも、1mm以下の反りは生じることがある。そこで、長年の経験で材の癖を読み取りながら、部材を組み立てたり、室内の置き場所を選定したりして、反りの影響を最小限にする。

 下のA邸の写真はムク製建具を設置して1年以上、B邸は半年以上経つ住宅だ。どちらの発注者も、「いまのところ反りなどの不具合はない」と話す。

A邸。本間工務店(東京都東久留米市)が設計・施工を手掛け、守谷建具店がスギのムク製建具を納品した。約20本分の引き戸と取り付け費用は約70万円。同社の本間大介さんは「別の職人に板目で建具をつくってもらったときは反りや狂いが多くて困ったが、この建具はクレームがゼロ」と話す(写真:本間工務店)

A邸。本間工務店(東京都東久留米市)が設計・施工を手掛け、守谷建具店がスギのムク製建具を納品した。約20本分の引き戸と取り付け費用は約70万円。同社の本間大介さんは「別の職人に板目で建具をつくってもらったときは反りや狂いが多くて困ったが、この建具はクレームがゼロ」と話す(写真:本間工務店)

 

B邸。化学物質を使わない家づくりを得意とするレインファーム(東京都国立市)が改修設計を手掛け、守谷建具店がムク製建具とヒノキの木製サッシを納品した。合板などの石油化学建材を好まない建て主の要望に応えた(写真:日経ホームビルダー)

B邸。化学物質を使わない家づくりを得意とするレインファーム(東京都国立市)が改修設計を手掛け、守谷建具店がムク製建具とヒノキの木製サッシを納品した。合板などの石油化学建材を好まない建て主の要望に応えた(写真:日経ホームビルダー)

 

B邸に納品した木製サッシ。木製サッシの標準価格は高さ2000mm×幅1650mmの2枚建てが9万3000円(ガラス込み)。YKKAPの外枠とアルゴンガス入り複層ガラスを組み合わせる(写真:日経ホームビルダー)

B邸に納品した木製サッシ。木製サッシの標準価格は高さ2000mm×幅1650mmの2枚建てが9万3000円(ガラス込み)。YKKAPの外枠とアルゴンガス入り複層ガラスを組み合わせる(写真:日経ホームビルダー)

 

夏は80℃前後まで室温が上がる乾燥用の倉庫(写真:日経ホームビルダー)

夏は80℃前後まで室温が上がる乾燥用の倉庫(写真:日経ホームビルダー)

 

 

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