100年以上改正されなかった民法(債権法)の抜本的大改正へ向け27日、民主党も議論を開始した。設計から工事、維持補修まであらゆる契約の最上位法律である民法改正の動向によっては、官民発注者と建設産業界との関係、商慣習が大きく変わる可能性もある。すでに法務省内では、委任・請負など契約に関する権利・義務や瑕疵(かし)担保責任期間の見直し、損害賠償範囲のほか、新たに下請負人の直接請求権付与などが議論の検討項目に挙がっていた。民主党は今後「債権法改正はあらゆる省庁、経済界、消費者に関係するため幅広く集中的に議論していく」(民法債権法検討ワーキングチーム=WT=座長の前川清成参議院議員)方針。
民主党の民法債権法検討WTは27日開いた初会合で、法改正へ向けて法務省が予定している2011年春の中間整理までに、債権法の総論だけでなく法務省内で議論の検討項目に挙がっている個別条文ごとに党内議論を進めていくことを決めた。
会合後、弁護士でもある前川座長は会社法創設時の法案審議を踏まえ「今回改正では条文が1000を超える。膨大な条文を突然提出されて細かな審議はできない」とした上で、「今回の改正は、経済界から消費者、さらには各省庁にも関係する大きな問題。個別条文ごとの議論とともに、消費者団体から経済団体まで幅広く複数回のヒアリングも必要だ」との考えを示した。
また前川座長は、党政務調査会の法務部門会議の下部組織であるWTを、政策調査会直結で横断的組織のプロジェクトチームに変更し、法務省が来年春以降に行う民法(債権法)改正中間まとめに対するパブリックコメントに、民主党としても意見を提出する可能性にも言及した。
法務省法制審議会部会では、これまでばらばらに規定されていた▽雇用▽請負▽委任▽寄託――を「役務提供型典型契約」としてまとめた上で、請負や委任などの契約について、報酬規定や報酬請求権、瑕疵担保責任と解除要件、責任期間の存続などをそれぞれ見直すことが議論の検討項目として挙がっていた。
建設産業界では、土木・建築設計の場合、契約が民法上の「委任」と「請負」の性格が混在しており、今後の改正動向によっては設計契約の性格が整理される可能性が高い。
また契約の整理で建設業界に大きな影響を与えそうな項目として、下請負人の直接請求権付与がある。
もともと、下請けと注文者(公共を含む発注者)との間には直接の契約関係がないため、債権者代位権など特例を除けば、下請けが注文者に直接報酬を請求できなかった。
仮に法改正で下請けへの直接請求権が認められれば建設工事の場合、元請けが破たんした時、下請けは発注者に請求することが可能となる。
実現すれば専門工事業界のこれまでの主張が具体化することになるが、発注者にとっては膨大な事務作業が発生することになる。
また条文化されても強制義務付けではなく任意適用になれば、公共・民間発注者を問わず、事務作業だけでなく元請け破たんリスクを直接引き受けることから、現実的な導入には難しさもある。
もう一つの焦点は、請負契約の規定見直しだ。具体的には、これまで請負契約だった▽機械の設置▽施設の保守点検▽家屋の修理▽清掃――などを請負契約の規定からはずす考えも示されている。
債権法改正法案は、理論上12年の通常国会提出が最短。法務省が09年10月に法制審議会に債権法のうち契約規定を中心にした見直し要綱の提示を諮問したことを受け、27日までに法制審部会は17回の会合を行っていた。法制審部会では、部会メンバーを含む民法学者や法務省職員が参加した民間組織「民法(債権法)改正検討委員会」が09年4月に公表した改正試案が議論のたたき台となっていた。
今回、改正される見通しの債権法は民法1044条のうち、325条分ある。このほか総則分の一部も含めれば見直し対象は約400条分だが、見直しの結果1000条を超える詳細な規定になるとみられる。
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