屋根面がぶつかる出隅「隅棟」を覆った板金(棟むねづつ包み)を外すと、屋根下ぶき材がぱっくりと口を開けていた。まわりには砂ぼこりがたまり、下ぶき材の切れ目には雨水が流れ込んだ跡があった。さらに下ぶき材を取り除くと、野地板の端部が腐っていた(上の写真参照)。
雨漏りの相談を受けた、雨仕舞いに詳しい玉水新吾さんは、「よくみかける事例」と言う。隅棟部は下ぶき材を増し張りするなど、二重の安全対策が重要だ。
さらに、「下ぶき材の表面には雨水が流れるものと考えて、雨仕舞いを心掛けたい」と玉水さん。上の事例でも、隅棟部以外のスレート板や下ぶき材をはがすと、野地板に黒いシミが数多く現れた。屋根材にかかわらず、くぎで屋根材を留め付けていれば、そのくぎ穴が弱点となりやすい。黒いシミは、下ぶき材の表面を流れた雨水がくぎ穴から浸入して野地板に至ったことを示しているという。
棟包みが吹き飛んだ
「押し入れや天井の雨漏りがひどくて…」そんな相談を受けた雨漏り調査・補修の専門会社のカメイアクア総合(東京都町田市)の亀井秀一さんは、原因を調べるために登った屋根の状況を見て驚いた。隅棟部分を覆っているはずの棟包みが吹き飛び、隣の家の屋根に転がっていた。住まい手が雨漏りを気にし始めたころよりも、ずいぶん前に強風などで外れてしまっていたようだ。
当然、露出していた隅棟部分は雨にさらされぼろぼろに。野地板は腐朽が進んでいた。小屋裏から該当部分を見上げてみると、そこには大きなシミ跡と、カビ、そして、キノコが繁殖していた。雨が降ったときは常時雨水が浸入していたため棟木は腐朽が進み、大きなダメージを受けていた。
板金を手掛ける平野工業(埼玉県さいたま市)の平野光男さんは、「棟部分の板金を留め付けているくぎは、笠木の収縮などで抜けやすい。台風の強い風がきっかけで棟包みが外れることもあり得る」と指摘する。
すき間に雨水が浸入
棟部への雨水の浸入リスクは、建物の立地条件などによっても異なる。上の写真は、水平な棟部分「平棟」の棟包みと屋根材のすき間から雨水が浸入して、棟包みをかぶせた笠木が腐った事例だ。
この建物の場合、一方に海が迫り、もう一方に山がせり出すといった地形だった。見晴らしの良い山の中腹に建っていたため、雨水は海側の風に乗り、下から吹き上がることもあるという。棟包みと屋根のすき間から、雨水が浸入して、笠木を湿らせていたようだ。こんな状態が長く続いていたため、腐朽が進んだ可能性が高い。
このような場所でなくても、「棟包みのすき間から雨水が浸入していたケースは少なくない」と亀井さん。屋根にあるすき間には雨水が入り込むリスクがあることを覚えておきたい。
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