海岸堤防復旧の基本的考え方 / 建設工業新聞

国土交通省は、東日本大震災で損壊した海岸堤防の復旧に関する基本的考え方を公表した。台風シーズンを迎える前に盛り土や土のう積みによる高潮への緊急防御措置を実施。台風シーズン明けに、高波から防御できる高さの暫定堤防を整備する。対策を優先的に進める地区を決めるための判断基準や、複数の対策工法も併せて示した。被災堤防の復旧案は、4月28日に初会合を開いた「海岸における津波対策検討委員会」(座長・磯部雅彦東大大学院教授)で示された。東日本大震災では、岩手、宮城、福島各県内の海岸堤防(総延長約300キロ)のうち約190キロが全・半壊したとみられている。沿岸部では地震で地盤が沈下した所も多く、浸水被害が広範囲に及んでいる。こうした状況下で復旧工事を円滑に進めるため、海岸関連の省庁が協議して基本的な考え方を整理した。
 具体的には、まず台風シーズンに入るまでに、高潮の侵入防止、内陸部の排水対策を促進するため、決壊個所の緊急防御を実施。出水期までに盛り土などで決壊個所を締め切る。盛り土の高さは過去の潮位を勘案し、背後地の状況や河川堤防との連続性などを考慮して検討。台風が増える8月中をめどに、現地発生材などを活用して盛り土を補強する。
 緊急防御を優先的に実施する個所を決めるための判断材料として、▽居住可能な家屋が残っている集落▽地域生活の復旧・復興に不可欠な公共施設・ライフラインが浸水エリアにある区間▽海水の排水作業やがれき処分に支障をきたす区間-などを提示した。現位置での復旧が可能な部分決壊の場合は岩ずり盛り土をブロックで被覆。全面決壊した個所は沿岸部でなく、陸上部に土のうを積み上げるといった対策例も列挙した。
 台風シーズン明けには、本復旧に先立って高潮・波浪に備える越波対策として暫定堤防を整備する。暫定堤防の高さは近年発生した高波浪を防御できる高さとし、表ののり面はコンクリートで被覆、裏ののり面と天端にはブロックを施工し、洗掘防止のための補強も実施する。暫定堤防を優先的に整備する個所を決めるための判断基準は、緊急防御個所の判断基準に「農地利用が見込まれる区間」を加えたものとする。実施個所や堤防の断面などについては関係機関と調整して決定し、地域の実情に応じた対策を講じるように求めている。

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