消防法違反のビルを是正命令前でも公表 / 日経ＢＰ

東京消防庁は、防火設備の不備など消防法に違反している危険なビルの名称や違反内容を、是正命令前であってもウェブサイトで公表する方針を固め、都火災予防条例の改正案を9月21日開会の都議会に提案する。来春の施行を目指す。同庁によると、消防機関が是正命令前に違反を公表するのは全国でも初になるという。

　公表するのは、（1）屋内消火栓設備やスプリンクラー設備の未設置など重大違反のあるビル、（2）防火管理者の選任義務違反など比較的軽微な内容であっても、過去3年間に2回以上の違反があったビル。消防庁のウェブサイトで、ビルの名称と所在地、違反内容を公表する。主に雑居ビルを想定している。

　重大違反は確認から2週間後、それ以外は2カ月後に公表するが、その間に違反が是正されれば公表は取りやめる。また、公表後でも是正が確認されれば直ちに消去する。速やかな情報公開を行うことで、ビル経営者らに自主的な改善を促し、同時に利用者の注意を喚起する。運用の詳細は、これから詰めてゆく。

　同庁によると、防火設備の不備などの違反を確認しても、書類の準備や手続きに時間がかかって、是正命令を出すのが数カ月から数年後になるケースもある。また、雑居ビルではオーナーの変更などで、一度是正した違反が繰り返される例もあるという。公表によって改善が迅速になることを期待している。

　東京・高円寺で2009年11月に16人の死傷者を出した雑居ビル火災を受けての措置。火災後、同庁が実施した緊急一斉立入検査では、対象の建物2702棟（1万2903テナント）のうち、93％にあたる2529棟で違反があった。