熱ロスのない住宅用レンジフード / 日経BP

運転したときの熱ロスが生じないレンジフードが、設計者の間で話題になっている。富士工業(相模原市)が製品化した、IH調理器専用「室内循環フード」だ。調理時に発生する油やにおいを、外に排気せず、特殊フィルターで吸着、ろ過して室内に戻す。

製品の問い合わせは富士工業販売、電話番号は042-768-3754(写真:富士工業)

  一般的なレンジフードは、1時間当たり400m3以上の排気風量を備える。それによる熱ロスをエアコンで補った場合、東京で年間2270kWh、電気代は年間1万3700円と、同社は試算する。

  フィルターによる脱臭性能について同社企画開発本部の越智貴志さんは、「調理中でも90%以上脱臭し、1時間後はほぼ無臭という結果を得ている」と話す。ただ、煙は除去できないので、グリルを使う場合は、脱煙機能を備えたIH調理器を使う必要がある。

  不燃材でないフィルターを使っている関係で、消防署との協議が生じる可能性がある。「東京消防庁など10都市の消防署から、主な製品の設置許可は得ているものの、近いうちに日本消防設備安全センターの防火性能評定を取得し、どの地域でも設置しやすくする予定だ」と越智さんは話す。

  排気ダクトが不要なため、レイアウトしやすい点も魅力だ。ただし、価格は幅600mmが約27万円からと、一般的なレンジフードの倍以上。約3年ごとにフィルター交換も必要で、交換費用として3万3650円かかる。

  今川建築設計監理事務所(北海道北広島市)は、設計を手掛ける高断熱高気密住宅に、早速同製品を採用した。

  「通常のレンジフードは停止中でも空気が漏れていることが気密測定でわかり、この製品を採用した。においが残るといったクレームはないが、ダイニングに24時間換気装置を設置して、脱臭・脱煙性能を補う措置は講じている」と社長の今川祐二さんは話す。 

暖房をほとんど不要とする高断熱高気密住宅を手掛ける今川建築設計監理事務所(北海道北広島市)が、新築住宅で室内循環フードを取り付けている様子。40kg以上の重量があるため、梁から吊り下げている。本体の空洞部分にはフィルター類が収まる(写真:今川建築設計監理事務所)

 

本体に取り付けるフィルターと前面パネルなど。フィルターは重いもので4~5kg。交換は高所作業となるので、専門家に依頼する。IH調理器専用なので、調理器をガスコンロに交換しないよう利用者に注意したい(写真:今川建築設計監理事務所)荒川 尚美

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