暖冷房は家庭のエネルギー消費の1/4
家庭で消費されるエネルギーのうち、暖冷房用が大半だと思っている人が多いのですが、実は暖冷房の割合は1/4しかなくて、しかも冷房の割合は2%しかありません。図1のように暖冷房が約24%、給湯・調理が約35%,照明・家電が約41%ということで、なんと照明・家電が一番大きいのです。
このデータは、南関東から九州までの温暖な地域(省エネ法の気候区分でいうIV地域)でのことです。北海道、東北など(I~III地域)ではやはり暖房の割合が、沖縄などの蒸暑地域(VI地域)では冷房の割合が大きくなっています(図2)。
給湯が暖冷房より多いなんて意外だと思うでしょうが、日本人の風呂好きが表れているといえます。これをサウナに替えると水や電気の使用量が減るといわれていますが、果たして風呂好きの日本人は、これをよしとしないでしょう。
そこで給湯の省エネが必要になります。この場合、給湯の省エネといっても給湯設備の高効率化だけでなく、浴槽と配管の断熱化、そして節水型の水栓を用いることまで含めた総合的な視野が必要です。
給湯設備の高効率化で注目を集めているのが、ガスでは潜熱回収型給湯器(エコジョーズ)、電気では自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯器(エコキュート)です。そして忘れてはいけないのが太陽熱温水器です。
また、電気とお湯の両方をつくることで効率を高めてくれるのがコージェネレーション(熱電併給)システムです。ガスコージェネレーション(エコウィル)、燃料電池コージェネレーション(エネファーム)があります。
照明の省エネでは、白熱灯を代替する蛍光灯や、さらに最近ではLED(発光ダイオード)照明が注目を集めています。家電による消費もとても大きいのですが、そのなかでも三つの大物があります。冷蔵庫、テレビ、暖房便座です。照明も家電も電気の分野ですから、太陽光発電で賄うことができます。
冷蔵庫は高効率のものが、テレビは低電力のものが求められ、メーカー間で激しい省エネ開発競争が繰り広げられています。暖房便座についても省エネ製品を開発しているメーカーがあります。しかし冷蔵庫やテレビと異なる点があります。家が暖かければ不要なものだということです。家全体を暖かくする欧米では、便座にカバーを付けることはあっても暖房便座はありません。
ゼロエネルギーを実現する自立循環型住宅
暖冷房の省エネでは、断熱・気密を高め、暖冷房器具の効率を高めることのほか、忘れてはいけないのが自然の恵みです。冬は日差しを取り込み、夏は風を入れることです。
南関東から九州までの温暖な地域では、一軒の家庭が年間に消費するエネルギーはおおよそ80GJ(ギガ・ジュール)です。ギガは10億のこと。ジュールはエネルギーの単位でなじみの薄いものですが、照明で使われるW(ワット)で示せば、1Wh=3.6kJとなります。これでもピンとこないと思いますが、一般の家庭で約80GJのエネルギーが使われていて、これに対して、高断熱・高気密に取り組み、高効率設備機器および省エネ家電製品を採用することによって、半分の40GJ以下までに削減できると考えられています(図3)。
そして、太陽光発電4kW分を設置すると約40GJのエネルギーを創り出すことができます。つまり、使用するエネルギーと創り出すエネルギーが等しいゼロエネルギーが可能になります。このような計算で省エネ設計を進めていく住宅を、国土交通省では自立循環型住宅と呼んでいます( 自立循環型住宅の公式サイト 参照)。その指導書となるのが「自立循環型住宅への設計ガイドライン」で、13の要素に分けて省エネ技術を示しています(図4)。
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