第三者活用モデル事業の効果検証 / 建設工業新聞

 国土交通省は、3月末から宮崎県発注の建築工事で実施している公正・中立な第三者が工事の請負契約をめぐる受・発注者間のトラブルの未然防止と早期解決を図るモデル事業でその効果を検証した。第三者が協議に入ることで受・発注者間の認識の不一致や工事上の問題点が明らかになり、トラブルの原因を事前に解消。無用な工期遅延や費用増のリスク低減にもつながり、第三者活用の効果を確認できたという。今後も第三者が工事の進ちょくや設計変更などの状況を常に把握し、当事者間の協議が円滑に進むよう参考意見を示す予定だ。
 モデル事業は宮崎県の椎葉村役場庁舎新築工事(3階建て延べ3702平方メートル)。工期は12年1月31日まで。3月30日に受注者(吉原建設)と発注者(椎葉村)、第三者(税所陽一氏)が合意書を交わし、国際コンサルティング・エンジニヤ連盟(FIDIC)の契約約款に基づく現場訪問の実例を参考に、税所氏が現地を訪れ、工事に関する質疑応答を行う初の現地ミーティングが行われた。
 ミーティングで税所氏が取り上げた施工途中でトラブルになりそうな事項は、東日本大震災の影響による資機材の入手困難と価格高騰、基礎掘削で玉石が出現した場合の工期延長、地元木材の材料指定など7項目。資機材の入手困難と価格高騰については、受・発注者ともに契約上の取り扱いについての認識が薄く、現実化した場合には対立が起きる恐れがあったが、受・発注者間の処理手続きや全体スライド条項の適用条件、単品スライドの適用ルールなどを確認した。
 玉石が出現した場合の工期延長に関しても、発注者からの条件明示がなく、そのまま工程検討を行うと手戻りが起きる可能性があったが、この対応も事前に確認できた。地元木材の材料指定では契約図書が分かりにくく、受・発注者間で認識に食い違いがあることが分かり、問題点を解消したという。国交省は、契約直後の早い段階で3者で質疑応答を行った結果、トラブルを未然に防止でき、受発注者双方にメリットがあったと分析した。税所氏の次回訪問は今年12月を予定している。

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