日経ホームビルダーは、住宅の新築やリフォームの際に実務者と顧客の間で発生したトラブルの事例とその教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2013年3月号に掲載した内容の一部を紹介します。
家を新築したAさんは、住宅会社B社の営業マンに勧められるまま、床置き式の蓄熱暖房を採用した。「冬場でも半袖で過ごせる」という言葉を信じたからだ。ところが実際に住んでみると、設定温度を24℃にしても、寒くてたまらない。
Aさんは「これでは生活できない。何とかしてほしい」とB社に抗議。しかし、営業マンからは2週間以上たっても返事がない。仕方なく補助暖房を使うことにしたため、その分の電気代がかさむことに。納得がいかないAさんは、住まいの悩みに応えるNPO法人住環境健康情報ネットワーク(愛知県一宮市)にB社との交渉方法を相談することにした。
同ネットワーク理事長の中井義也さんは、「まず、暖房機の性能が部屋の広さに適しているのかということと、断熱の仕様がどうなっているのかについて確認することが重要だ。その上で、実際の生活が営業マンの話と大きく異なってしまった原因の説明と対応策を求めるように助言した」と説明する。
蓄熱暖房は、安価な深夜電力を利用してレンガなどの蓄熱体に熱を蓄え、それを日中に少しずつ放熱して部屋を暖める仕組み。温風を循環させるエアコンやファンヒーターとは異なり、輻射熱で暖める。
「温風ですぐに暖かく感じる対流式のエアコンに慣れている顧客の中には、輻射式の暖房に違和感を覚える人もいる。半袖で過ごせるような実例があるのかもしれないが、万人向けの説明ではない」と中井さんは指摘する。
顧客は説明通りの性能を期待するもの。また、蓄熱暖房はエアコンなどと比べて高価な設備であるだけに、その期待度も高くなりがちだ。実務者には、的確な提案でトラブルの芽を摘む努力が必要だ。
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