国土交通省は2010年12月13日、一級建築士7人に建築士法に基づいて同月7日に下した懲戒処分の内容を発表した。うち1人は長期優良住宅関連の最初の処分事例となった。この建築士は大手住宅会社のタマホーム(東京都港区)宮崎支店に設計担当社員として勤務していた郡司和徳氏(49)で、業務停止11カ月の処分を受けた。同社によると、社内でも処分を受けて10年の秋に退社したという。
タマホームは主力商品である木造住宅「大安心の家」などに、長期優良住宅の認定を受けることが可能な標準仕様を採用。建て主が希望した場合に認定を申請している。郡司氏は10年3月、宮崎県内の「大安心の家」10棟を対象に認定通知書を偽造し、別の6棟については09年末から10年にかけて、認定申請に必要な書類である適合証を偽造した。この偽造行為を10年7月に宮崎県が把握したことなどがきっかけで、今回の処分を受けるに至った。
補助金や優遇税制など、長期優良住宅のメリットを住宅会社が利用するには、建築確認申請とは別の手続きで行政庁に認定を申請する必要がある。認定申請に必要な書類である適合証を得るには、登録住宅性能評価機関への技術的審査の申請も必要だ。郡司氏はこの2通りの申請手続きを怠った。宮崎県建築住宅課の担当者は10年12月14日、「刑事告発も視野に入れて宮崎県警と相談している」とコメントした。
「偽造」の対象となった16棟の住宅はすでに完成、引き渡し済みだ。長期優良住宅の認定申請は着工前でないとできないため、この16棟は必要な仕様を満たしていても認定は得られない。タマホーム本社総務部の松橋力副部長は、建て主たちに陳謝して申請費用を返金したことや、申請手続きを適正に行うよう社内チェックを強化したことなどを明らかにした。
郡司氏がなぜ申請手続きを怠ったかについて、松橋副部長は「少なくとも多忙だったからではないだろう。忙しいときは申請手続きを社外の建築士事務所に委託してよいことになっているからだ」と話している。
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