長期優良住宅倒壊の真相 / 日経BP

主催者である木を活かす建築推進協議会(代表理事=大橋好光・東京都市大学教授)がまとめた最終報告書を中心に取り上げる。このほかに、一般には公表されていない資料がある。研究にかかわった研究者が国土交通省に対し、実験結果の説明に用いた資料だ。この中に、実験で何が起きたのかを端的に示した図があった。

国交省への説明に使われた内部資料の一部
国交省への説明に使われた内部資料の一部

 この図は、試験体1と2が建築基準法の1.8倍という振動入力を受けてどのように動いたか、加振終了までの35秒間をグラフと写真で追ったものだ。上側が試験体1、下側が試験体2で、建物全体と柱脚部のみのアップからなる。中央にあるのが1階の層間変形量と時間の関係図。左から右に流れ、上下に振れるほど変形量が大きいことを示す。試験体1が倒壊する前の層間変形量は、最大で7分の1ラジアンにも達していた。

 なお資料に記されている「BSL波」とは、実験に使われた人工波、「基準法大地震想定波」のことだ。増幅率は「160%」だが、報告書によると増幅後の振動は「建築基準法が要求するスペクトルの180%相当」としている。  

 試験体2の挙動について、報告書は「最大で330mm程度滑る挙動を見せた」と、文章だけで記載していた。この資料の試験体2の写真こそが、その真の姿だ。

浮いた柱脚がカメラ目前に落ちる

 内部資料の柱脚部の写真は、実験の際に撮影されたビデオ映像から切り出したものだ。E-ディフェンスでの実験では、様々な位置に無人カメラを設置し、挙動を映像で記録している。柱脚部のみを写したカメラもあったのだ。試験体2の柱脚部がどう動いたかは、この図の写真で一目瞭然だろう。

 試験体2の正面から見て左側の柱脚は、入力開始から15秒過ぎのあたりで大きく浮き上がった。いったんは土台付近に着地したが、何度も浮くうちに着地地点がズレていった。何度目かのロッキング挙動の際、柱脚は無人カメラの近くに落下、カメラの画面いっぱいに壁材が迫った。柱脚は当初の位置より30cm以上動いていた。

試験体2の柱脚アップ
試験体2の柱脚アップ

 

 筆者は取材の過程で、この柱脚部のみのビデオ映像も閲覧した。その際、関係者から「(試験体2が)実際の基礎の上に建っていたなら、建物全体が転倒しただろう」という証言を得た。静止画では分かりにくいが、落下の勢いは非常に激しいものだ。確かにその通りだろうと納得した。  木造住宅の基礎の立ち上がりの厚みは12cm程度が一般的だ。そこを踏み外せば、柱の下端は基礎立ち上がりの下、つまり地盤面に落下することになる。この実験の試験体のような一体性が高い建物では、柱脚の落下は建物全体の大変形に直結する。他の柱脚も外れていたことを考えると、転倒する可能性も十分にある。

  E-ディフェンスの振動台は頻繁に用いられる。試験体は振動台以外の場所に鉄骨の架台を置き、その上で制作するのが常だ。実験前に架台ごとクレーンで吊り上げ、振動台に載せるのだ。こうした実験の都合上、実験では基礎が再現されていなかった。

  実験では数多くの映像が撮影されるものの、一般に公開されるのはごく一部だ。だが、柱脚固定の重要性を示す意味で、試験体2の柱脚部の映像はぜひ公開してほしい。

入力波はなぜ「1.8倍」になったのか

 一方、この実験において、研究者らによる入力波の選択ミスという側面は確かにあった。報告書には次のような記載がある。

 試験体1は、許容応力度計算上、建築基準法の求める耐震性能の146%の性能を有する設計となっていた。これは、振動台実験に先立って行われた耐力壁単体についての静的水平載荷試験による終局耐力や靭性を考慮して、許容応力度計算に用いる耐力壁の許容耐力を用いて算定したものである。
 これに対して2回目の加振では入力した地震動は建築基準法が要求するスペクトルの180%相当であり、計算上は倒壊する可能性が十分にある加振であった。

  なぜこの入力に踏み切ったか。その理由として報告書は、「試験体1の倒壊直前での終局状態を確認すること」を挙げる。試験体2との比較にとどまらず、試験体1でもギリギリの終局を観察したかった、ということだ。

 理由はもうひとつある。この実験プロジェクトには試験体3と4という別の試験体も存在しており、公開実験の前に振動実験を実施していた。この3と4の実験結果が予想より大きな耐力を示したのだ。

 報告書は次のように記している。

  試験体3、4の2回目の加振実験結果から許容応力度計算では考慮されない試験体の実耐力が当初予想と多少異なったこと、この情報を用いた事前の数値シミュレーションなどから、試験体1は倒壊を免れるとの予想があったため、当該加振を行った。

  「大変形域における最大耐力は、事前想定よりも高い」--。公開実験前、研究者らにはそうした見込みがあった。建基法の1.8倍に相当する加振は、こうして決まった。だが試験体3と4は、倒壊を防ぐために内部にワイヤーを張り巡らせていた。報告書は、このワイヤーが性能を向上させていた可能性も示唆している。

 報告書は今回用いた地震波(建基法の1.8倍)について、かつて気象庁が「震度7」と認定した2つの巨大地震の地震波と比較している。阪神大震災において付近の全壊率が30%以上だったJR鷹取波と、新潟県中越地震において地震計による計測震度階が震度7を超えたJMA川口波だ。加速度応答や変位応答、最大速度といった点から比較して、「今回の160%入力波の木造住宅に対する破壊力は、JR鷹取やJMA川口のそれに勝るとも劣らないものがあったと結論づけられる」という。

これを機に議論を

 阪神大震災以来、数多くの振動実験が行われてきた。中でも今回の実験は語り継がれるものになるだろう。例え無人の試験体による実験でも、実大サイズの建築物の倒壊現象には、見る者に生命の危機を感じさせ、不安を抱かせるインパクトがある。いかに想定外の地震だとはいえ、人間の生活が営まれる住宅という建物は、試験体1のように崩壊してよいものなのか。そんな素朴な問いが浮かぶ。

 今回の実験の柱脚だけに着目すれば、試験体1の柱脚は抜けず、試験体2は十数秒で抜けた。だが試験体1は耐力壁がせん断破壊し、元に戻る力を失って倒壊してしまった。試験体2は基礎から転落しかねないほど暴れまわった。前者は主催者の意図とは異なる結果だが、建物が最終的にどのように壊れるかを考えるうえで、大きな技術課題を示した貴重な結果だ。

 試験体1は揺れによって大変形し、まず1階の水平耐力要素(筋かい)が折れた。さらに揺れ続けた結果、1階は10分の1を超える変形が元に戻らなくなり、ゆっくりと倒壊し始めた。柱が傾きすぎて、2階以上を支えられなくなったためだ。こうした1階層崩壊は非常に危険な壊れ方だ。試験体2も実際の基礎の上に建っていれば柱脚が転落し、1階が大変形して崩壊するか、建物全体が転倒した可能性が高い。試験体1と同様、危険であることに違いはない。

 建物に限らないが、構造は想定以上の力が加われば必ず壊れる。だが脆い壊れ方をしない、粘り強い構造とすることは可能なはずだ。どうやったら内部空間が守れるのか、この実験を機に、幅広い議論が求められているのではないだろうか。

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