日経ホームビルダーは、住宅の新築やリフォームで発生しがちな顧客からのクレームの内容を知ることで得られる教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2011年8月号に掲載した内容の一部を紹介します。
マンションに住むAさんは、約1200万円を掛けて専有部分を全面リフォームすることにした。重視した設備の1つがシステムキッチンだ。カタログを見て、採用する製品の候補を2つに絞り込んだが、最終的な決断がなかなか付かなかった。2種類の製品の色は同系色で、微妙に違っていた。また、どちらも数百万円レベルのグレードの高い製品だが、100万円弱の価格差があった。
リフォーム会社の担当者のBさんは、カタログを前にして悩むAさんに、ショールームで製品の実物を見ることを勧めた。Aさん宅の近くにあるキッチンメーカーのショールームに問い合わせると、2種類のうち高価な製品しか置いていないことが分かった。Aさんが「どちらか1つでも実物を見られればいい」と言ったので、2人でショールームへ出掛けた。
実は価格に敏感だった
ショールームに着くとAさんは次第に不機嫌になり、「選択肢はこの製品だけということかしら」とつぶやいた。「リフォーム会社とキッチンのメーカーが自分をはめて、高い買い物をさせるのかと疑っている様子だった」(Bさん)。
Aさんは、カタログを見ているときは主に色へのこだわりを口にしていた。しかし内心では価格にも敏感だった。ショールームで高いほうの製品だけを見るのは事前に約束したことだったが、実際に見ると価格に対する懸念が膨らみ、機嫌を悪くしたようだった。
Aさんに「価格を重視している」と明言されたわけではないが、Bさんは事態を重く見た。「顧客の気持ちにわだかまりを残したままプロジェクトを進めれば、今後、顧客の意に沿わないことが起こった場合に不満が爆発する恐れがある」と考え、安価なほうのシステムキッチンを展示しているショールームを探した。遠くにあったが、AさんはBさんとともに訪問。結局、安いほうの製品を選んだ。
顧客は要望を全て言葉で明示するとは限らない。BさんはAさんがキッチン選びで価格を重視していることが当初は分からなかったため、あらぬ疑いを掛けられることになった。「顧客の潜在的な要望にも注意が必要だった」と反省している。
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