経済産業省は、地球温暖化対策の一環で、二酸化炭素(CO2)を回収して地中などに貯留するCCS事業を具体化させる。11年度に大規模実証試験の候補地3カ所を詳しく調査し、試験の実施場所としての適性を評価。早ければ同年度内にも実証試験の実施主体の選定を始め、事業に着手する。実証試験は、建築・設備設計から施工、CO2の貯留、モニタリングまでを一貫して行う。事業期間は7年超、総事業費は数百億~1000億円程度を見込んでいる。
CCSは発電所や工場などから排出されるCO2が大気中に放出される前に分離・回収し、地中や海中に貯留・固定化することで、大気のCO2濃度を人為的に低減する技術。海中貯留は環境への影響が懸念されているため、現在は地中貯留をメーンに各国で研究開発や事業化の取り組みが進められている。日本も地球温暖化対策として有効な革新的技術にCCSを位置付け、研究開発を加速するモデルプロジェクトを推進。実用規模(年間CO2貯留量10万トンクラス)で実施する地中貯留試験を通じて、分離・回収から貯留に至る一連のシステムを安全・安定的に管理運営できることを実証する計画だ。
経産省はこれまでに、大規模実証試験の候補地として北海道、福島、北九州の3カ所を中心に適性評価のための地質調査などを行ってきたが、各地点のデータ収集・分析の進ちょくにばらつきがあることから、11年度にあらためて各地点の詳細な調査を実施。併せて、各地点特有の技術的課題のほか、実証試験を行う上での法規制への対応、安全性、CCSに対する地域社会の反応などの検討も進める。
候補地の調査期間について、経産省では11年度末までを予定しているが、関連技術の開発状況も踏まえて同年度中に実証試験に着手する可能性もあるとみている。実証試験の実施主体についてはCCS事業に関係する幅広い分野から募る方針。建設業界でも大手ゼネコンを中心にCCS事業への参画を検討しており、新たな環境ビジネスへの期待が高まっている。経産省の11年度予算案にはCCS関連に約60億円が計上されており、実証試験候補地の詳細調査のほか、CO2の固体吸収剤や分離膜モジュールなどシステムの導入コスト抑制に向けた技術開発にも取り組む。
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