2009年はマンション建設を巡る裁判で、建築確認を取り消す判決が目立った。
例えば、1月14日の東京高等裁判所の判決だ。東京都新宿区に建設中だったマンションについて、建築確認処分を取り消す判決を下した。12月17日の最高裁判決で確定し、一般の新聞やニュースも取り上げたので、ご記憶の読者も多いだろう。
9月9日には大阪地方裁判所が、大阪狭山市内に既に完成していたマンションの建築確認を取り消す判決を下した。こちらは、10年2月中に控訴審の判決が言い渡される予定だ。
この二つの事例は、いずれの敷地も都市計画法上、開発許可申請の対象となる500m2を超えることや、周囲に崖があることなど共通点が少なくない。建築紛争に数多くかかわっている日置雅晴弁護士は、こうした共通点の中から、「自治体の判断を踏まえて、建築主事などが建築確認を下ろすこと」の問題点を指摘する。
例えば新宿区の事例では、敷地が東京都建築安全条例の接道要件を満たしていなかったにもかかわらず、新宿区長が敷地周辺の安全性などを認め、同条例の特例を認定。この認定を受けて建築確認が下ろされた。ところが東京高裁は、敷地に防災上の問題などがあるため、区長の特例認定に違法性があると判断。この認定を前提とした建築確認は違法だとして、取り消した。
大阪狭山市の事例では、大阪府知事が交付した開発許可等不要証明書を前提に建築確認が下ろされた。しかし大阪地裁は、同証明書が交付されても、建築主事などは開発許可の有無などを審査しなければならないと判断。斜面に建築物である立体駐車場が建設されているなど、開発許可が必要な計画だったにもかかわらず、開発許可を受けないまま下ろされた建築確認は違法だとして、この確認を取り消す判決を下した。
日置氏は、「自治体や建築主事などに加えて、裁判所の判断も加わる制度の下では、その建築計画が適法なのか、違法なのかが予見しづらい。また、違法性が認められたとき、責任の所在があいまいになる」と話す。
新宿区のマンションでは今後、違法性を是正する対策のために、事業主と区とが話し合うことになる。着工後の確認取り消しは、着工前の取り消し以上に多くの手間とコストを生む。日置氏は、着工後の確認取り消しについて、次のように訴える。
「建築基準法や都市計画法上、無理がある計画を強引に進めると、周辺住民らが提起した訴訟で、着工後でも建築確認を取り消されるリスクがあることを、事業主も建築設計者も認識する必要がある。事業主側の申請だけで判断して建築確認が下ろされる現在の仕組みでは、周辺住民が建築計画に異議を訴えるには裁判に頼ることになる。こうした事態を繰り返さないためには、建築確認を下ろす前に、周辺住民が意見できる場を設けることが必要ではないか」
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