浄化槽の工事に必要な国家資格「浄化槽設備士」の業務を任された財団法人・浄化槽設備士センター(東京都千代田区)が、試験や講習会など業務のほぼすべてを別の公益法人に委託していることが分かった。役員14人中5人が天下りで、2人いる職員も省庁OB。人件費は受験料などで賄っている。センターは国家資格化とセットで設立され、省庁が資格を利用して天下り先を増やし、維持してきた構図が浮かんだ。
設備士センターは国土交通省と環境省が所管。浄化槽設備士の資格に関する業務を行う機関に指定されている。設備士になるには、センター主催の講習会を受講するか、試験合格が必要。講習は5日間(受講料9万1000円)で、今年度は全国7カ所で行う。試験は年1回(受験料2万3600円)。国交省によると、試験合格者は約2万1500人、講習会修了者は約4万1400人に上る。
しかし、講習会の講師やテキスト作成などは、財団法人・日本環境整備教育センターに委託している。教育センターは、国家資格「浄化槽管理士」の試験や講習会を実施する環境省所管の公益法人。両資格の講習内容には、「浄化槽概論」など共通点が多く、関係者は「どちらの資格の業務も教育センターでできる」と指摘する。
また、設備士の試験や講習会の受け付け業務、会場設営は社団法人・全国浄化槽団体連合会会員の各地の協会に、試験監督業務は財団法人・全国建設研修センターや民間企業に委託している。09年度収支予算書によると、設備士センターが試験と講習で得た収入は9450万円だが、他法人への委託費は4780万円。非常勤の理事長への役員報酬は363万円で、職員給料は計1680万円。
設備士センターは「試験問題も独自に作成している。受験者減に伴って役職員の人件費も削減している」と説明した。
浄化槽設備士と管理士の前身の資格はいずれも、旧厚生省所管だった教育センターが認定する資格だった。浄化槽法が83年に制定された際、二つとも国家資格に格上げされた。
関係者によると、厚生省と旧建設省はその際、「業務を実施する機関として新たな公益法人が必要」と権限争いを展開。政治家の裁定で、管理士は教育センターが担う一方、84年に設備士センターが誕生したという。トップは歴代、建設省出身者が務め、役員には両省出身者らが天下りしている。【長谷川豊】
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