雨水を浄化・再利用することで、生活用水の完全自給を目指す実証実験に日大工学部(福島県郡山市)が乗り出す。必要なエネルギーは太陽光や地中熱を利用し、水道や外部電力に頼らない新たな生活スタイルの可能性を探る。大学の敷地内に12月、「ロハスの家3号」を建設し、実験を始める。
ロハスの家3号は、木造の平屋で、床面積は約100平方メートル。キッチンやバス、トイレなどを備える。地下に生活排水を微生物で浄化する浄化槽を3台設置し、屋根を使って集めた雨水を何度でも生活用水として再利用できるようにする。家の前に造る池も、雨水タンクとして活用する。
水浄化や生活などに必要なエネルギーは、屋根のソーラーパネルや隣接地に設ける「地中熱抽出供給システム」で供給。浄化槽の熱を暖房に、水の循環を冷房に利用するなど工夫して、室内の温度管理にもエネルギーを効率よく使う。
ロハスの家3号の屋根で得られる年間の降雨量約150立方メートルに対し、4人家族が1カ月に使用する水は約30立方メートルとされる。排水を再利用すれば、水の完全自給は十分可能だという。実際に学生がロハスの家で暮らして、実証する。
機械工学科の加藤康司教授(東北大名誉教授)を中心に、学内の機械、土木、建築の専門家が参画。地元の民間企業にも参加を呼び掛け、地場の技術も生かす方針だ。事業費は4500万円。
加藤教授は「持続可能な生活を目指すには環境を汚してはならず、家庭から汚水を出さないことが大事。社会の在り方の根底にも影響を与える」と話している。
日大工学部は、健康で持続可能な生活スタイル(ロハス)を目指す「ロハスの工学」の構築を進めている。2009年1月にエネルギー完全自給のためのロハスの家1号、今年3月にはエアコンに頼らない生活を目指す2号を完成させ、実験を続けている。
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