8対2の法則を2回潜り抜けた専門家を選ぶ / プレジデント

40人のクラスで上から8位の成績をめざせ。そう言われたら、頑張ればなんとか達成できると考える人は多いだろう。では、2位以内を目標にと言われたら? ハードルはかなり高そうだ。

上位2割の者が8割の利益を稼ぐという「8対2の法則」は有名だが、私がプロフェッショナルとして認めるのはさらに厳選された人だ。40人クラスで、8位以内といえば上位2割、2位以内はその8人中の上位2割に匹敵する。つまり、40人中上位2人になるには、8対2の法則を2回潜り抜けなければならない。

公認会計士の資格取得試験の合格率は、およそ10%程度。年によってバラつきはあるが、8対2の法則を2回潜り抜けると4%だから、そう遠くない割合といえる。この難関を突破するには努力だけでなく、「忍耐」と「創意工夫」が必要だ。

私が会計士を目指していたときには、学校の仲間に試験の答案を見せてもらい、研究を試みた。試験官の気持ちになって考えると、論文はキーワードやポイントになる論点、根拠で採点するはずであり、配点の基準も見えてくる。参考答案の丸暗記に励む受験生が多いが、参考答案は受験生より何倍も知識のある人が、あらゆる文献を調べて作ったものであり、実際の試験で再現するのは不可能に近い。できないことをやろうとするのでは、不合格にまっしぐら、となりかねない。

合格ラインにわずかに届かないライバルの答案からは、知っているのに表現できていないことが感じられた。自己検証が足りないのだ。対して優秀な人間は参考答案から真理を見つけていた。

重要点を見抜く、分析する、といった習慣をつけ、鍛錬すると、ひらめきといった力になり、現場で応用できる。仮説を立て、検証し、それに従って勉強する。そうして合格した人間と、予備校のヤマが当たって受かった人間と、依頼者がどちらを選ぶかといえば答えは明確である。

ヤマ当ては博打に近く、外れたら終わり。私は予備校が張ったヤマに人生を左右されるより、自分の力で確実に受かりたかった。だからこそ、人の答案を分析するという荒業に打って出たのだ。

資格取得の講師を務めた際にも、ヤマを当てようとするな、骨太な専門家になれ、と言い続けた。自分が依頼者側であれば選ばないような専門家になるのは明らかに矛盾であり、人生負け組の法則にのることになる。忍耐、創意工夫がなく、マニュアルでしか動けない人間は専門家ではない。インサイダー、買収など、目先の利益を追ってしまいかねないだろう。

厳しい競争を勝ち抜けば志も高くなり、自分は士(サムライ)だという意識が芽生える。外部の誘惑や圧力にも屈しない。報酬は、創意工夫と、忍耐で得た膨大な知識に対して支払われるべきものなのだ。

激しい競争を勝ち抜いていない人間には対応力がなく、現場が見えていない。昔、先輩の会計士から、工場ではスローガンを見ろ、と教えられた。事故をなくそうと書いてあれば事故があったと考えられるなど、スローガンには弱点が隠されていることが多い。私は現場では人数を見て原価を予想する。タバコを吸いにくる社員が減れば、会社にも社員にも余裕がない、リストラの先行指標と捉える。こういうことは教科書には書いていない。

8対2の法則を2回潜り抜けている人間なら重大な局面でも信頼して任せられる。そういった意味で、会計士や税理士や弁護士は合格率4~5%程度が適正で、合格率の高い年の合格者には要注意だ。

信頼できる専門家を見抜く基準は、相談したときのレスポンスが早いかどうか。10年選手であれば、専門外のことを相談してみるのもいい。優秀な専門家には、優秀なネットワークがあり、適切な専門家を紹介してくれるだろう。

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