勝手な変更個所は再施工しろ / 日経BP

日経ホームビルダーは、住宅の新築やリフォームで発生しがちな顧客からのクレームから得られる教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2010年11月号に掲載した内容の一部を紹介します。

 住宅建設の実務を手掛けている読者のなかには、「もし自分がこのクレームの主に出会ったら、違う対応の仕方をするだろう」という感想を抱かれる方もいるかもしれません。下記の「読者のコメント」に投稿していただけると幸いです。


 Aさんが勤める住宅会社は、建て主Bさんからのクレームに、引き渡して数カ月後のいまも対処中だ。Bさんは代金の一部の支払いを拒否し、外装材の全面張り替えを求めている。

 住宅会社は外装材を留める際に、納まりの都合で一部は標準仕様と違う留め方をした。また外装材の変形に備えて逃げ目地を設けた。設計図書には記載がなく、着工後の現場判断などによる措置だ。

 Bさんは施工中の現場を訪れてこの措置を知り、「図書の通りでなく、事前の説明もなかった工事は認められない」などと抗議。釈明に当たった設計担当のAさんは、品質向上のための措置であることや、仕様をすべて事前に図書に書き込むのは無理であることなどを訴えた。しかしBさんは納得せず、「ほかでも勝手な変更をしたのではないか」などと疑い、外装材の張り替えを求めるに至った。

(イラスト:勝田 登司夫)

 

対応ミスで不信買う

 2005年の耐震偽装事件などで低下した住宅業界の信用は、現在も回復途上だ。Bさんのように、工事の成果だけでなく設計図書との整合性や手順の正しさなども気にする建て主は増えているようだ。Bさんは大企業のエンジニアで、職業柄、工事過程のチェックや質問内容が特に細かかった。

 さらに住宅会社の顧客対応にはミスもあった。Aさんは3人目の設計担当者だ。前の2人は設計中、知識不足などでBさんの質問への対応が不十分だった。設計担当者には建て主の職業やこだわりなどが当初は伝わっていなかった。

 設計担当者が2回も替わったこと自体も影響して、Bさんは住宅会社に対する信頼を低下させていた。そのことが着工後に外装材の問題で強硬な要求をする呼び水になった──。Aさんはこのように推察している。

 「すべての顧客に公平に対応、という建て前だけではクレームは絶えない」。こう話すのは、住宅のクレーム対策のコンサルティングなどを手掛けるシーエスプランナーズインク(大阪市)の青山秀雄さん。かつて住宅会社で顧客対応の実務を長く担当した。顧客の職業やこだわりなどを早期に把握し、対応に反映させる必要があるとしている。

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