東京都八王子市にあるマンション群の一角で、2011年春ごろから高層棟2棟を含む計5棟の建て替え工事が始まる。同地域で起こった都市再生機構(UR)の欠陥マンション問題で、高層棟が建て替えになるのは初めてだ。
このマンション群は、URの前身である住宅・都市整備公団が1989年から92年にかけて分譲した。計46棟のうち、5棟は鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造10~14階建ての高層棟。残りは、壁式鉄筋コンクリート(RC)造や壁式ラーメン構造の中低層棟だ。
大規模修繕を始めた2000年ごろ以降、46棟すべてに欠陥工事が発覚。URは10年10月までに20棟を建て替え、18棟を補修した。
これまでに建て替えたのはすべて中低層棟だった。中低層棟では基礎梁の根元でコンクリートの打設不良が見つかったほか、耐力壁の曲げ補強筋が設計の半分しか入っていないなどの欠陥が次々と判明。調査と補修を繰り返すうちに費用が膨らみ、建て替えた方が安くなったからだ。
一方、URは高層棟の建て替えを拒み続けてきた。高層棟でもコンクリートのジャンカや配筋不良が見つかったものの、URはジャンカ部分にグラウトを充てんするなどの補修で対応できると主張。徹底した調査や建て替えを求める各団地の管理組合との間で対立が続いた。
ケンプラッツが08年11月に取材した際、UR分譲住宅瑕疵対策室室長代理の宮国永明氏(当時)は以下のように話している。「中低層棟では施工不良が目立った。しかし、高層棟は建設会社が気合を入れて慎重につくったようだ」
そんななか、先の高層棟2棟を抱えるD団地(仮称)に転機が訪れた。日本建築家協会(JIA)が09年4月、「補修は極めて困難」とする報告書をまとめたのだ。
D団地の管理組合が、第二東京弁護士会の仲裁センターのあっせんでURと和解契約を締結したのは08年5月のこと。第三者機関であるJIAに、調査や補修の方法、建物の構造安全性にかかわる技術的な判断を求めるという内容だ。
委託を受けたJIAは、高層棟が段違いや梁せいの異なる鉄骨を使っていることに注目した。設計の意図が施工者に正しく伝わっていたのかどうかを確かめる必要があるとして、鉄骨の柱梁接合部の調査をURに求めた。
URが一部のコンクリートをはつって調べると、突き合わせ溶接した部分にいくつかの溶接不良が見つかった。例えば、溶接の縁にくぼみができる「アンダーカット」と呼ばれる欠陥があったほか、溶接の始終端部を適切に処理していなかった。さらに、超音波探傷検査の結果、溶着金属の溶け込み不良も見つかった。
これらの調査結果を受けて、JIAは以下のような判断を下した。
「高層棟の柱梁接合部で見つかった溶接不良は、部材耐力に大きな影響を及ぼさないものの、地震時に鉄骨の梁端部が降伏した場合、靭(じん)性を期待できない。補修によって構造安全性を回復するのは極めて困難だ」
もし補修するとなれば、すべての柱梁接合部のコンクリートをはつって超音波探傷検査を実施しなければならなくなる。欠陥が見つかると、上向きの再溶接作業などが必要となり、補修の品質確保も難しい。
JIAはD団地の中低層棟についても、「通常考えられる補修の範囲を超えている」などと結論付けた。布基礎の底面にある鉄筋のかぶり厚さが不足している可能性などがあったからだ。補修するには、杭を新設して建物の重さを受け替えた後、基礎の下を掘削してコンクリートを増し打ちしなければならない。
URは報告書の受け入れを拒否
URと管理組合との和解契約では、双方が納得できる特別の理由や根拠がない限り、JIAの判断を受け入れることになっていた。 ところが、URはJIAの報告書の受け入れを拒否。報告書に基づいて補修すると、建て替えよりもおよそ2.5倍の費用がかかるからだ。補修で対応することを事実上否定したJIAは契約違反に当たるとして、URは10年10月時点で、JIAへの委託料の支払いを一部保留している。
高層棟の柱梁接合部に見つかった溶接不良に対するJIAの判断について、URは以下のように反論している。
まず、溶接不良による不具合は鉄骨の部材断面積に対して非常に小さいので、柱梁接合部は十分な構造耐力がある。そのうえで、地震時に鉄骨の梁端部が降伏することは、一般的に想定できないと切り捨てた。
鉄骨(S)造の建物ならばJIAの指摘通り、鉄骨の梁端部が変形する。したがって、降伏した場合の靭性が求められる。しかし、この団地の高層棟はSRC造なので、柱梁接合部が鉄筋コンクリートに囲まれている。URは、鉄骨の梁端部は変形せず、コンクリート部分のフェースで降伏すると主張。鉄骨の梁端部の靭性が期待できないからといって、建物の構造安全性が確保できないわけではないと訴えた。
JIAの報告書に基づいた対応を求める管理組合と、受け入れないUR――。両者の議論はしばらく紛糾した。
建て替えと補修との違いは何か
議論が再び動き出したのは09年12月のことだ。URが協議会の場で突然、管理組合に以下の選択肢を提案した。
(1)URが考える方法でURが補修する、(2)URが建て替え相当額を管理組合に支払う、(3)URが全戸を買い取る――の3つだ。
管理組合が決めたのは2番目の選択肢だった。管理組合は現在、建て替え工事費の算定業務を設計事務所に委託。11年春ごろまでに、少なくとも数十億円規模とみられる工事費を確定させて、工事を発注する計画だ。
詳細は不明だが、管理組合はバリアフリーなど現行法規に対応したうえで、現状とほぼ同じ建物に建て替えるとみられる。工事の発注手続きや工事監理は、管理組合が委託するCM(コンストラクション・マネジャー)が代行する。
欠陥工事が発覚した後の一連の事実は、URの対応のまずさを浮き彫りにした。
例えば、建て替えに向けて動き出したD団地の高層棟について、URは補修で対応できるとの考えを崩していない。だが、「早期解決のために、建て替え相当額を支払うことにした」。UR分譲住宅瑕疵対策室室長代理の笠尾卓朗氏はこう話す。
建て替えを選択したのはあくまでも住民――。URはこのような図式をつくることで、建て替えが必要なほど粗悪な建物をつくった責任の所在をあいまいにしようとしているかに見える。
こうした対応のしわ寄せは今後、住民の不安や怒りとなって噴き出す恐れがある。
その火種の一つは、D団地のすぐ隣にあるA・B団地で既に存在する。2団地で1つの管理組合をつくってURと交渉してきたA・B団地には、D団地と同様に2つの高層棟が建つ。設計者や施工者、施工時期、構造、階数などはD団地の高層棟とほぼ同じだ。
A・B団地の高層棟は、D団地でJIAの報告書がまとまる前に補修工事を開始。補修を終えた10年4月、半分以上あった空き住戸を民間デベロッパーが再販するなど、新たな住民の生活が始まっている。
今後、建て替え工事が始まるD団地の高層棟を見て、A・B団地の住民はどう思うのか。
建て替えと補修との違いは何か。「住民との話し合いの経緯のほか、施工不良の程度など各棟個別の事情で判断した」と笠尾氏は説明する。しかし、誰もが納得できるわけではないだろう。
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