都市再生機構(UR)を「伏魔殿(ふくまでん)のようなうさん臭い団体」と評して「解体的見直し」を掲げた前原誠司国土交通大臣(当時)の下、国交省では2010年2月からURのあり方に関する検討を始めた。10月5日に発表した報告書では、「完全民営化」が望ましいが、現実的ではないと指摘した。その理由は「莫大な借金を一般会計で肩代わりしなければならないから」というものだった(詳細は日経アーキテクチュア11月8日号の特集「URの存在理由を問う」)。
約13兆5000億円にも上る有利子負債を抱えたURの「台所事情」を前に、どのような議論が交わされたのか。国交省の「独立行政法人都市再生機構のあり方に関する検討会」で座長を務めた森田朗・東京大学法学政治学研究科教授に聞いた。
――報告書では「完全民営化」は現実的でないと結論付けました。なぜURは「JR」のように民営化できないのですか。
国鉄民営化の際には、30兆円を超える借金を基本的に国が引き受けました。URについても、14兆円の借金を国が引き受けてくれるならば、「完全民営化」は有り得ると思います。完全民営化すべきという答申も、できないわけではありませんでした。
しかし、国が借金を肩代わりすることが国家財政的にどのような意味を持つのかを考えれば、完全民営化が合理的な解決策とは言えません。この点について、委員の間にはそれほど異論はなかったと思います。
そもそもURは、財務的に難しいものを一緒にして独立行政法人とし、「借金を自分たちで返す」という仕組みの下につくられたと、私は認識しています。そして、これまでに少しずつ借金を返してきたのは確かです(注:URは04年の設立時に抱えていた繰越欠損金7300億円を3495億円に圧縮している)。ただし、いつ返し終わるかは分からない。
検討会で議論になったのは、返済できているのは現在の金利水準だからであって、金利が少しでも上がると困難な状況に陥るという点でした。もしURが破綻すれば、結局は国民の負担として跳ね返ってきます。
出口のない問題に直面していた
――報告書では、「完全民営化」「政府100%出資の特殊会社」「新しい公的法人」の3案を併記しました(下図参照)。
他の独立行政法人改革との兼ね合いもありますし、最初から一つに意見をまとめるつもりはありませんでした。前原前国交相が掲げた「解体的見直し」にどの案が近いのかは分かりませんが、政務三役のご判断に任せたいと思います。「政治主導」ですから。
私自身は、自民党政権のころからURの見直しにかかわってきました。当時の委員は私以外、政権交代で全員入れ替えとなりましたが、民主党政権になって、以前よりも改革のドライブがかかってきたことは、間違いないでしょうね。
――借金返済のスピードを早めるため、保有する賃貸住宅を売却していくべきでは。 事業仕分けで批判になったものに、東京の都心部にある高額家賃のマンションがあります。月に20万円を超える家賃を取る物件を、URがやっていていいのか、売り飛ばしてしまえ、と。検討しましたが、そこで上がった収益で、ほかの賃貸住宅のメンテナンスや更新にかかる費用を捻出しているという実情があります。
借金を早く減らすという意味では、物件の値下がりを見越して早い段階で売ってしまうという考え方があれば、保有して高収益を上げていくという考え方もある。どちらにするかまでは、今回の検討会では判断できません(注:報告書では委員の意見として、賃貸住宅を現時点ですべて売却すると総額は7兆円となり、賃貸住宅部門の債務である約11兆円の弁済が不可能であると記述した)。
ある意味で出口のない問題に直面していたと言えます。関連企業を整理したり、経営の透明度を高めたりして改革を進めるのは当然のことだし、既にURでも、それなりに着手をしていました。しかし、そもそも借金をどう返していくかという点について、国が肩代わりしないことを前提とすれば、選択肢は限られるのです。
URが管理する賃貸住宅では、住人の高齢化と建物の老朽化が進んでいます。仮に民営化するならば、住んでいる人も含めて国や地方自治体に引き受けてもらう必要が出てくる。しかし、持ち出しで引き受けてくれる自治体は基本的にありません。国が持参金をつけたり、安く売ったり、ということになりますが、あまり安く売ってしまうと、財政面での意味がない。
実施基準の見直しが始まった都市再生事業
――賃貸住宅と並んでURの事業の柱となっている都市再生については、実施基準の見直しを進めるとのことですが。
これまでは、地方が手を挙げて国が補助金をつけ、URによる再開発が行われてきた。しかし、率直に言って、地方であまり大規模な開発をしてもフロアが売れるわけではない。昔のように、思い切って投資をするとプラスの効果を生んで、経済が活性化し、税収が増えるという時代ではないのです。となれば、事業を厳選して実施する必要があるでしょう。
採算性を含めたラインをどこに引くか、基準の明確化で問題になるのは、地方自治体との関係です。採算性がいい事業というと、都市部の条件がいいところに限られてくるでしょう。本来、地域の活性化を必要としている地方都市にとっては、厳しい状態になるかもしれません。
借金を返す上で、収益性の高いところで事業をするのは理にかなっています。しかし、URの性格上、民業圧迫してまでやるのはフェアではありません。そうなると、事業範囲はますます限定されてくるのかもしれません。
(注:URは11月10日、内部の事業評価監視委員会に設置した「都市再生事業実施基準検討等専門部会」(部会長:黒川洸・東京工業大学名誉教授)で、基準の明確化などの検討を始めると発表している)
――「採算面を重視しつつ、もうけすぎない」というお題の両立は難しそうです。むしろ国の機関に機能を戻すなど、公的な立場を強化すべきという選択肢はないのですか。
検討会では、そういう話は出なかったですね。地方分権の時代でもありますし。よほど国策上の理由がない限り、難しいでしょう。
関連して言えば、報告書では都市再生部門と賃貸住宅部門を分ける必要性について触れています。全く性格の異なる事業が渾然一体となっており、どこが稼いでいて、どちらにどれだけのお金を回しているかがはっきりしないからです。稼いでいるところは、自分のところに還元されないと勤労意欲がなくなるし、稼いでいないところは、誰かが借金を返してくれると考える。
ただし、会計だけ分けるのか、組織も分けるのかについては議論があります。団地再生などは、都市再生のノウハウが使われているので、両部門が一体となっていることでメリットが出る分野です。今後は政治判断の下、具体的に詰めていってほしいと思います
実施基準の見直しが始まった都市再生事業
――賃貸住宅と並んでURの事業の柱となっている都市再生については、実施基準の見直しを進めるとのことですが。
これまでは、地方が手を挙げて国が補助金をつけ、URによる再開発が行われてきた。しかし、率直に言って、地方であまり大規模な開発をしてもフロアが売れるわけではない。昔のように、思い切って投資をするとプラスの効果を生んで、経済が活性化し、税収が増えるという時代ではないのです。となれば、事業を厳選して実施する必要があるでしょう。
採算性を含めたラインをどこに引くか、基準の明確化で問題になるのは、地方自治体との関係です。採算性がいい事業というと、都市部の条件がいいところに限られてくるでしょう。本来、地域の活性化を必要としている地方都市にとっては、厳しい状態になるかもしれません。
借金を返す上で、収益性の高いところで事業をするのは理にかなっています。しかし、URの性格上、民業圧迫してまでやるのはフェアではありません。そうなると、事業範囲はますます限定されてくるのかもしれません。
(注:URは11月10日、内部の事業評価監視委員会に設置した「都市再生事業実施基準検討等専門部会」(部会長:黒川洸・東京工業大学名誉教授)で、基準の明確化などの検討を始めると発表している)
――「採算面を重視しつつ、もうけすぎない」というお題の両立は難しそうです。むしろ国の機関に機能を戻すなど、公的な立場を強化すべきという選択肢はないのですか。
検討会では、そういう話は出なかったですね。地方分権の時代でもありますし。よほど国策上の理由がない限り、難しいでしょう。
関連して言えば、報告書では都市再生部門と賃貸住宅部門を分ける必要性について触れています。全く性格の異なる事業が渾然一体となっており、どこが稼いでいて、どちらにどれだけのお金を回しているかがはっきりしないからです。稼いでいるところは、自分のところに還元されないと勤労意欲がなくなるし、稼いでいないところは、誰かが借金を返してくれると考える。
ただし、会計だけ分けるのか、組織も分けるのかについては議論があります。団地再生などは、都市再生のノウハウが使われているので、両部門が一体となっていることでメリットが出る分野です。今後は政治判断の下、具体的に詰めていってほしいと思います
政策上の位置付けを要する
――かつての公団は、サラリーマン向け住宅の大量供給という役割を担ってきました。現在のURはどうでしょう。
昭和30年~40年代、生産人口が非常に多く、国が急成長できる時代に、比較的良質な住宅を供給してきた。そういう意味で、歴史的な役割は十分に果たしてきたと思います。しかし、現代に同じ仕組みで対応できるかというと難しい。全く違う発想で考えていかなければならないでしょう。
彼らが日本の住宅分野を引っ張ってきたという自負を持っているのは、間違いないと思いますが、それは過去のことです。意識改革を求めるという意味で、メッセージはきちんと出せたと思っています。
今後は、高齢社会の中でURをどのように位置付けるのかが課題でしょう。首都圏や近畿圏といったURの団地が多いところでは、団塊の世代の高齢化が一斉に進みます。2012年には彼らが65歳になる。こうした高齢者が住む住宅を民間で供給できるかというと、まず不可能です。
一方、入居者への家賃特例をどうするかという問題もある。一般の住宅に住まわれている方だと、同じ家賃ならもう少し住環境が劣悪になる。URの団地に入居している人だけ優遇するのはおかしいのではないかという意見がありました。こうした問題を根本的に解決しようとすると、国の社会福祉・社会保障政策全体で、住宅に対してどのように取り組むかという話になります。URの見直しの枠内だけで議論するのは難しい。
個人的には、URは意識改革をして新しく生まれ変わり、収益性はともかく社会的に貢献できる方向に転換していく道があると思いましたが、今回はそういった議論はあまり出ませんでした。例えば、都市部の分譲住宅の管理は今後、相当に深刻な状況になることが予想されます。もしURがノウハウを持っているなら、こうしたところで社会的な役割を果たし得る余地があるかもしれません。
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大阪府行政書士会 旭東支部所属 (大阪市都島区・鶴見区・城東区・旭区) 東洋法務総合事務所の B l o gへようこそ。
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