適判という検算をなぜ避ける / 日経BP

三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)の腕利き支店長の回顧録のようなノンフィクションに最近出会った。中にその銀行マンによる経済対策についての発言が引用されていた。「最近、思うんですわ。今の不況を何とかするいちばんの方法は、モフ(MOF)検査を停止することやないか、とね。MOFの検査がなければ、銀行は安心して企業に融資できる。すると、市場に金が回って経済が立ち直っていくんやないか」

 MOFとは当時の大蔵省(現財務省)を指す。つまり、国の行政機関による検査が国の元気を奪っているという、業界の論理だ。そこで思い出したのが、日経アーキテクチュア2010年11月8日号が報じた「建築基準法見直しは結論出ず」という記事である。

 構造計算適合性判定(以下、適判)制度の対象範囲についての見直し案などが論議されたが、「基準法の改正が、住宅着工の低迷を招いたので審査を見直すべきだ」とする建設業界側の意見が根底にある。業界側から導き出された適判制度見直し案は、改まらないその体質を象徴的に表していると感じた。

 業界側の主張は以下の通りだ。
1.構造設計一級建築士が関与した場合には不要とする。
2.自ら完成後の建築物を使用する予定の建築主が同意する場合に不要とする。
3.サンプル調査を実施する代わりに不要とする。

 被害者たちの側に立つならば、姉歯事件の苦い経験を踏まえ、建築物の安全性を確保するために建築設計業界の慣行を改善しようとしているはずであるのに、これでは何もしないと同じことになる。検討会が結論を出すに至らなくなったのも、当然といえば当然である。

 第一に、構造設計一級建築士は神の手を持つわけではない。

 次に、建築計画に関しては、基本的にはすべて建築主の同意が必要である。しかし、ほとんどの建築主は、建築の技術的なことなど全くというほど理解していない。その人の同意によって、安全性確保の保証ができるなどということは有り得ない。サンプル調査にいたっては論外である。

必要不可欠な時間がなぜ割けないのか

 もちろん、あの事件は犯罪であり、それを可能にした仕組み自体に問題があったのであって、その、とばっちりを受けてひどい目に合わされているという業界の本音は理解できる。

 しかし構造計算書は、建物の安全性を何十年間にもわたって確保する上で、設計図書の中で最も重要な部分を構成する。念には念を入れてチェックするのは当たり前の話だ。そのためにかかる時間は本来「絶対必要条件」のはずだ。複式簿記という画期的な方法を編み出しても、決算書を作成するに当たっては、税理士・会計士の手によって、貸し方・借り方の全取引が精査され検算が行われる。50~100年もの寿命を期待される建築物を作るにあたって、検算のための1カ月やそこらの時間が、なぜ割けないのだろうか。一般人としては理解に苦しむばかりである。

 建築主にあらかじめ計画を説明する中で、実行に移すためには従来と比較して時間がかかること。従って、その費用についても若干余分にかかること。すべては建築物の安全性確保に必要であること。以上を説明して、なお納得しない建築主であれば、計画から降りるぐらいの勇気が企業としては必要であろう。

 2007年7月6日の最高裁判決を引き合いに出すまでもなく、土地の工作物である建築物は、建築主のための安全性の確保だけですませるわけには行かない。建築業界の低迷の最も大きな要因は、一連の確認審査手続の煩雑さではなく、経済情勢全般の影響であることを認識すべきだ。安全・安心への配慮の行き届いた建築物を提供することによって、他社との差別化を図り、不況脱出を図る覚悟を固めたときに道は開かれると確信する。

 折しも「建築基本法」制定へ向けて、勉強会が設置されることになった。いわゆる消費者目線で、今度こそ、実のある議論をしてもらいたい。

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