あの位置ではダメ / 日経BP

日経ホームビルダーは、住宅の新築やリフォームで発生しがちな顧客からのクレームの内容を知ることで得られる教訓を、「クレームに学ぶ」として連載しています。ここでは、2011年2月号に掲載した内容の一部を紹介します。


 建て主のAさんは、箱形の戸建て住宅を住宅会社に注文した。屋根については、「中心部は切妻屋根に、周縁部は陸屋根にしたい」と、営業担当者のBさんに伝えた。

 Aさんは、切妻屋根の妻面に窓を設けることを要望した。小屋裏の採光だけでなく、「外観のアクセント」にすることが目的だという。「外からよく見える窓にしてくれ」とAさんは強調した。

 BさんはAさんの意向を自社の設計担当者に伝えた。その結果、妻面には三角形の大きな窓が設けられた。住宅が完成すると、Bさんは現場責任者とともに、Aさんによる検査に立ち会った。

 Aさんは妻面の窓が見えないと言って怒り出し、「要望通りの設計に直せ」と住宅会社に求めた。「路上から見えるのにどういうわけだ」とBさんは困惑した。

 窓の「見え方」を重視

 Aさんが「見えない」と言ったのは、正面玄関前の路上から見えないという意味だった。切妻屋根の妻面は、正面の外壁よりも後退した位置にある。玄関前の狭い道路からは死角になっていた。

  Bさんは完成検査の前に、玄関から少し離れた路上に立って、妻面の窓がよく見えることを確認。Aさんの要望通りの外観にできたと思い込んでいた。

  しかし、Aさんの言う「外観のアクセント」とは、あくまでも正面外観の一部分として目立つことだった。

(イラスト:勝田 登司夫)

 

 Bさんは設計担当者や現場責任者と協議。切妻屋根を前方へ約900mm伸ばして、妻面が玄関前の路上からよく見えるようにした。50万円前後かかった追加工事費は、Aさんに請求しなかった。

  「建て主の言葉を文字通りに受け止めるだけでは、要望の聞き取りとして不十分な場合がある」。住宅会社のクレーム対策のコンサルティングなどを手掛けるシーエスプランナーズインク(大阪市)の青山秀雄さんの持論だ。

  青山さんは、この住宅の外観に対するクレームについて、次のように語る。「問題の窓をどこから見た外観のアクセントにしたいのか、建て主の言葉だけでは分からない。営業担当者は要望を聞いた直後に質問して、確認しておくべきだった」。

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