清水建設は、普通板ガラスの両面に貼り付けるだけでガラスが防火設備に変身する「防火フィルム」を開発した。通常は厚さ1mm程度の透明なフィルムだが、火災時の熱で発泡して保護層を作り遮炎・遮煙・遮熱性能を発揮。ガラスのひび割れや脱落を防ぐことができる。同社はプラスチック製品などを製造・販売するSVC(栃木県佐野市)と協力して、国土交通大臣の一般認定を取得した。SVCは4月にも販売を開始する予定だ。
新開発したフィルムは、厚さ1mmのケイ酸ソーダ性の防火基材をPET系の保護フィルムで挟んだ構造となっている。ケイ酸ソーダが110度以上の熱で発泡する特性に着目した。火災時には厚さ3、4センチに発泡して保護層を形成し、炎や煙の拡散や熱が伝わるのを防ぐ。ガラスにひび割れがあっても、発泡したケイ酸ソーダがその隙間を塞ぐため、遮炎・遮煙性能を確保できる。
これまでの実験では、普通板ガラスが100度に達するとひび割れによって脱落することがあるものの、防火フィルムを貼付すると、ひび割れが生じても800度近くまで脱落しないことが確認できた。また、火災発生側のガラス表面温度が500度程度に達しても、反対側のフィルム表面は100度程度にしか上昇しないなど、遮熱性能も確認済みだ。
フィルムの貼り付けは簡単で、水を噴霧したガラス表面に重ね合わせてフィルム全体を圧迫するだけ。新築、改修を問わず使うことができる。
避難経路などに使うガラス間仕切などの多くは、防火設備としての仕様が求められるようになった。しかし、これまでは価格の高い耐熱強化ガラス、意匠性を損なう網入りガラスなどしか選択肢がなかった。
同社は、防火フィルムを差別化技術として活用していくほか、 4月からSVCを通じて外販をスタートさせる。販売価格は普通板ガラスと防火フィルムの材料費の合計で、耐熱強化ガラスの半額程度に設定する。 当面は幅900mm、高さ2700mmのサイズを販売するが、将来的にはラインアップを充実させる方針だ。
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