日本土木工業協会(土工協)は、「建設市場の変化に対応したビジネスモデルの提案~『脱・請負』とグローバル化」と題した提言をまとめた。建設市場の変化を踏まえ、ゼネコンが経営モデルを変革していく際に参考となる考え方を示したもので、国内市場の縮小を乗り越えてきた欧州企業を例に、施工請負に依存した経営からの脱却と積極的な海外展開の必要性を指摘。インフラの運営分野に精力的に進出し、施工分野のノウハウを活用して運用事業での利益を効率的に得ていく道筋を示した。実現には、経営層の意識改革や、インフラの運営ノウハウを持つ異業種企業との連携、プロジェクト企画提案能力の強化などが必要だとしている。
提言内容は経営企画委員会(前田靖治委員長)が検討。4日の理事会で報告された。理事会後の記者会見で中村満義会長は「脱請負は大きな切り口。(経営の)ヒントになる」と語った。提言では、業界構造の変化や競争の激化で建設会社の利益は大幅に低下しており、人員削減などの応急措置では対応できないとの見方を示し、従来型のビジネスモデルの転換が必要だと指摘した。その参考として、公共施設の事業権を民間に付与する「コンセッション方式」に積極的に取り組んでいる欧州の建設会社のケースを例示した。海外事業比率を50%に引き上げる目標も示した。
請負依存からの脱却に当たっては、リスクを取ってインフラ運営事業に長期間取り組むことや、施工ノウハウの活用により運営事業での利益の最大化を図ることが必要だとした。グローバル化の面では、海外のインフラ事業の施工請負で収益が上がる仕組みを構築する一方、PPP事業など脱請負型のビジネスを海外でも展開するべきだとした。インフラの補修などの増加を見据えると、大手だけではなく、地方建設業にも同様の考え方が適用できると指摘した。
行政による環境整備の必要性にも言及し、官民連携事業が想定される公共施設の整備・更新費用の把握やコンセッション方式の導入などを具体策に挙げた。海外プロジェクトの形成では、民間提案案件のフィージビリティー・スタディーへの公的資金の積極活用などを盛り込んだ。
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