東日本大震災によってセメント需給がひっ迫する懸念が出てきた。セメント協会によると、被災地では23日時点で国内全工場の生産力の8%を占める4工場が操業停止中。サービスステーション(SS)も太平洋沿岸を中心に15カ所から出荷できていない。復興に必要なセメントは今年後半から本格的な出荷が見込まれるものの、各社は生産設備の合理化を進めてきたことで、被災地からの生産移転が難しい状況。計画停電や燃料確保の問題もある中、関東や近畿では需要が上向き、「需給が厳しい状況が生まれるかもしれない」(上村清同協会流通委員長)と関係者は危機感を募らせている。
被災地には、6社・8工場が点在する。このうち津波で甚大な被害を受けた岩手県大船渡市の太平洋セメント・大船渡工場をはじめ、八戸セメント・八戸工場(青森県八戸市)、三菱マテリアル・岩手工場(岩手県一関市)、日立セメント・日立工場(茨城県日立市)の4工場(年間生産能力約420万トン)が操業を停止中だ。
セメント業界は、会員各社が協力し、被災エリア外の工場(同約4930万トン)とSSからの生産・供給を万全にすることで、復旧・復興に支障が出ないよう最大限配慮する考え。ただ広範囲にわたってインフラが大きく損壊し、「改修工事は3~4年かかった阪神大震災以上になる」(上村委員長)見通し。堤防をはじめ構造物の基準や仕様が見直しされれば、全国規模で改良工事が発生する。
被害の全容がいまだ判明せず、11年度のセメント内需(協会現行予想値=前年度比1・2%減の4100万トン)は「想定しにくい」(上村委員長)のが実情。そうした中、同協会がまとめた2月のセメント需給は国内販売が前年比1・6%増の340万トンとなり、関東や近畿エリアは3%以上増加。都市部の需要が増加基調にあることが鮮明になった。操業停止中の4工場の生産を代替するにも、これまでの需要減を受けて各社は生産設備の合理化を進め、操業率を高めたことで、工場は「フル生産に近く、余力はない」(同)とされる。セメントの搬送でもSSが被災した上、原発被災の影響で海運にも影響が出ている。
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