政府は3月11日、今国会での成立を目指してPFI法改正案を閣議決定した。東北地方太平洋沖地震が起きた日の午前のことだ。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の活用は、国や自治体の財政が厳しいなかで、必要な社会資本整備を進めるための手段だ。この法改正は、建設会社や建設コンサルタント、建築設計事務所の事業領域を広げる可能性を秘めている。
今後のPFIでは、公共施設の利用料金で事業を成立させる「独立採算型」を増やしていくことを意図している。従来との大きな違いは、民間事業者からの事業提案を積極的に受け止める仕組みを整えたことだ。創意工夫やノウハウを発揮しやすいようにした。
ただし民間事業者は、事業の効果や採算性を自ら評価して提案しなければならない。これによって提案の質を担保する。そして官には、提案に検討を加え、民間事業者に遅滞なく応答することを義務付ける。
コンセッション方式(施設の所有権を公共側に残したまま施設の運営権を民間に付与する方式)の導入も、法改正の目玉だ。改正案では「公共施設等運営権」と位置づけた。民間事業者が公共施設の運営権を得て、施設のサービス内容や利用料金を決められるようにする。
民間事業者は運営権を抵当に入れて、金融機関から資金を調達。金融機関はこの見返りとして、事業に介入できる仕組みだ。改正案には、事業の運営権を譲渡できる規定も盛り込んでいる。ただし、公共施設管理者の許可が前提となる。
「考える人」の存在感が増す
さて、改正案が施行されると、建設会社や設計事務所には、どのような資質が求められるのだろうか。当然のことながら、事業性を見抜く力と、実施後の運営力が大切になる。不動産事業を考えれば分かりやすい。基本となるのは収入と費用だ。
収入を算出するには、利用者数や利用回数、料金を見積もらなければならない。一定の事業期間のなかで、「利用者数×料金」が最大となるような設定が重要だ。料金が高すぎれば利用者は現れず、安過ぎれば採算が厳しくなる。収益性を保つには、利用者のニーズをしっかりと把握しなければならない。ニーズに影響を及ぼす社会や環境の変化も予測する必要がある。人口、競合施設の動向、気候の影響などを調べなければならない。
費用についても同様だ。施設の維持や運営にいくらかかるのかを正確に把握しなければ、収支計画が狂う。災害リスクも加味すべきだろう。利用者の安全を確保しながら、費用を抑えることが求められる。ある程度の快適性も必要だ。サービスが低下すれば、利用者が減って収入も減る。
従来のような公共工事の設計受託や工事受注ならば、予測が外れても決められた報酬を得ることができた。ところが独立採算型のPFI事業では、収入を過大評価したり費用を過小評価したりすると、事業の存続自体が危うくなる。
独立採算型のPFIは、請負で成り立ってきた会社にはハードルの高い仕事だ。半面、創意工夫とチャレンジ精神に富む会社にはチャンスをもたらす。
身近なところでは、公共の所有する土地や施設の活用があるだろう。収益を生み出す器とする提案力を備えれば、得意の設計や施工の技を生かせる。事業運営や資金調達が苦手なら、不動産会社や金融機関、商社などと連携する手もある。「考える人」や「交渉できる人」の存在感が間違いなく増してくる。
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