今、できることをやる / 日経BP

東京都世田谷区の商店街にある豊島工務店では、1階の作業スペース前で、東日本大震災の義援金を募るバザーを開催。大工職が作った腰掛けや鉢入れ、本棚などの木工品が並び、売り上げの全額を義援金に当てている。

商店街の一角にある豊島工務店の店頭。行き交う買い物客が足を止めて、奥で大工職が木工品を製作する様子を興味深そうに見ていた。こうした木工品の売り上げを全額、震災の義援金に寄付する(写真:日経ホームビルダー)
商店街の一角にある豊島工務店の店頭。行き交う買い物客が足を止めて、奥で大工職が木工品を製作する様子を興味深そうに見ていた。こうした木工品の売り上げを全額、震災の義援金に寄付する(写真:日経ホームビルダー)

 

 震災直後、豊島潔社長は顧客や仕事仲間の安否確認に奔走した。着工準備にかかっていたリフォーム工事では、建材・設備の手配にも追われた。1週間ほど経過して、震災全体の状況がわかってくると、被害の大きさにあらためて衝撃を受けた。

  日がたつにつれて、延期になる仕事が生じたり、サッシなど建材の確保に見通しが付かなくなったり、不安は募るばかり。そんな時、会長を務める父親が言った。「このままじっとしていてもしょうがない。おれたちにやれることをやろうや」。そんな一言が豊島社長の背中を押した。

  義援金バザーはそうして始めた取り組みの一つ。「バザー自体は以前から開いていたが、今回は通常の倍近い売れ行き。顧客も『何かしたい』という気持ちが強いのだろう」(豊島社長)。そのほか、大工職を仕事仲間の現場へ応援に出したり、OB顧客を訪ねて被害箇所の補修や家具の転倒防止の相談に乗ったりと、町内を駆け回る毎日だ。「地域の人に少しでも頼りにしてもらえれば…」。豊島社長は思いを打ち明ける。

  日経ホームビルダーの連載「アイデアの小箱」では、このような家づくりのプロたちの日常業務に関する「ちょっとした工夫やアイデア」を毎号紹介しています。

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