中古住宅・総合的な支援策を推進中 / 日経BP

政府は今、「新成長戦略2011」の一環として、中古住宅とリフォームの市場整備に乗り出している。消費者が安心して中古住宅を購入でき、リフォームに取り組めるようにするための仕組みづくりが進行中だ。その狙いと内容について、国土交通省の住本靖氏に聞いた。

―― 「中古住宅・リフォームトータルプラン」とは何を目指しているのでしょうか。

住本 日本の住宅ストックはすでに5700万戸を超えました。一方で、最盛期には185万戸だった新築住宅の年間着工戸数は80万戸を割り込んでいます。中古住宅が増えて新築住宅が減っているのだから、住宅市場における中古住宅のシェアが拡大していいはずなのに、現状ではそうなっていません。

 我々は、その原因は消費者が中古住宅に対して抱く2つの「イメージ」にある、とみています。その1つは、品質や構造に問題があるのではないかという不安。もう1つは、見た目の汚さに対する心理的な嫌悪感です。この2つが改善されれば、中古住宅を買う人は増えるのではないでしょうか。

 中古住宅の「イメージ」を上げる手段はリフォームしかありません。そこで、中古住宅市場とリフォームを「トータル」で支援し、市場の活性化を促したいと考えています。

―― 具体的には、どのような支援策があるのですか。

住本 まず、中古住宅の品質を担保するために、第三者による検査と保証を組み合わせた「既存住宅売買瑕疵保険」を用意しました。

 従来の中古住宅売買では、買った住宅に瑕疵(=欠陥)が見つかった場合の保証責任は売り主にあり、その責任期間は宅地建物取引業者ですら2年と短いものです。しかも、中古住宅は売り主が個人の場合が多く、保証能力にも限界があります。そこで、「既存住宅売買瑕疵保険」では、契約期間を5年とし、個人間の売買の場合は売り主に代わって検査機関が保証責任を負う仕組みにしました。

 また、通常、保険に入るための第三者検査は家を買った後に行いますが、希望によっては買う前に検査が受けられるようになっています。事前に保険に適合する物件だとわかれば安心して買えるし、もし不適合だった場合は、補修方法などのアドバイスが受けられます。

―― リフォームにも支援策はありますか。

住本 リフォームにはすでに「リフォーム瑕疵保険」があります。

 住宅の工事は、完成すると構造体などの重要な部分が壁紙など仕上げ材の下に隠れてしまい、瑕疵があっても見つかりにくい。この「リフォーム瑕疵保険」では、工事をしている最中に第三者のチェックを受けることができるので、品質確保にも有効です。

 今後の課題は、売買とリフォームの連携ですね。中古住宅を購入してリフォームする場合、現状では「既存住宅売買瑕疵保険」と「リフォーム瑕疵保険」の2つの保険に入らなければなりません。そのため、これらを1本化する保険制度をまもなくスタートさせたいと考えています。

 これまでは、中古住宅そのものの品質に不安がある上、リフォーム工事では悪質業者の存在が問題になっていました。その両方に保険の裏付けが得られれば、安心感は飛躍的に増すでしょう。中古住宅の品質が保証され、自分好みにリフォームできるようになれば、消費者にとって、新築に劣らない魅力が感じられるはずです。

―― これまでも耐震改修や省エネ改修には補助制度がありましたが、今後、新たな補助の仕組みは。

住本 たとえば、耐震改修のように機能の向上を目指したリフォームはもちろん重要ですが、単独では消費者にとって魅力に乏しい。今後は、耐震改修と同時に内装や設備を新しくするリフォームを推進したいですね。それには、一棟丸ごとの改修ではなく、一部屋からでも気軽に始められるようにする必要があります。一度に一棟すべてをリフォームするのは負担が大きく、ハードルが高いもの。けれども、一度小さなリフォームを経験して満足感を得れば、リピーターになる人は多いからです。

 われわれ行政にも責任はありますが、今のリフォーム業界は縦割りになっています。たとえば、構造にかかわる耐震改修ができる会社と、インテリアが得意な会社が分かれていて、なかなかトータルなリフォームのニーズに応じられない。そこで今、国土交通省としてもリフォーム業界に働きかけをしているところです。

 今後は、「住宅展示場」が「リフォーム展示場」へと移行するようになるでしょう。リフォームの効果と価格がわかりやすく示されれば、消費者もリフォームに踏み切りやすくなるはずです。今後は国土交通省もバックアップして各地のホームセンターや家電量販店、百貨店などでリフォームフェアを行い、PRに努めたいと考えています。

―― リフォーム業界の反応は。

住本 すでに、売買とリフォームを一本化しようとする動きが広がっています。不動産会社も住宅メーカーも、中古住宅を買い取ってリフォームし、再販する事業に乗り出しています。デベロッパー系列の管理会社がリフォームに進出する例も見られるほか、有力な家電量販店の攻勢も活発です。

―― 将来の展望をお聞かせください。

住本 近々には、保険制度の拡充が課題です。保険の対象となる部位の拡大や、保険期間の延長、保険金額の増加を検討したいと思います。また、市場拡大だけでは経済政策にとどまりますが、将来的にはその先に、街並み、まちづくりを視野に入れた、次世代の中古・リフォーム市場のあり方を模索していきたいですね。

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