国土交通省は、「社会保険未加入対策の具体化に関する検討会」の初会合を開き、建設業許可・更新時での加入状況の確認方法など論点を提示した。12月までに計3回の会合を開き、2012年2月に具体策を取りまとめる。12年度当初に必要な政省令・告示を改正、周知・啓発期間を経て、12年夏ごろから施行する予定だ。
社会保険未加入問題については、国交省の建設産業戦略会議が企業単位で100%、労働者単位で製造業並みの加入を目指すとした目標設定を提言
保険加入を徹底するため、建設業法施行規則を改正し、建設業許可・更新の申請書類で保険加入状況を記載した書面を追加するほか、同法で規定している特定建設業者が下請けに対して指導すべき事項に保険加入関係規定を追加。省令を改正して特定建設業者が施工体制台帳や再下請通知書、作業員名簿などで下請けの保険加入状況を確認するなどの方向性が示されている。
特定建設業者による下請けへの指導内容・方法を示したガイドラインの作成や、法定福利費の適正な見積もり・原価確保を徹底する発注者向けのガイドラインも整備する考え。事業所への立入検査や未加入企業への行政指導・処分、保険担当部局への通報、経営事項審査での未加入企業の減点幅拡大(告示改正)なども検討事項となっている。
検討会では、各実施内容などの具体的な方策をまとめる。初会合では、許可・更新時の確認対象と必要書類、経審での対応を論点に挙げた。建設業許可・更新では現在、労働保険概算・確定保険料申告書と保険料の納入領収済通知書の2種類を提出している。両資料で事業所単位での保険の加入対象事業所かどうかが確認できる。ただ、労働者単位の保険加入まで確認するためには、「雇用保険被保険者資格取得等通知書」も必要になる。しかもこの書類で加入対象の有無を確認するためには、手間がかかり、負担が増えかねない。
未加入が判明した時点での建設業許可・更新の扱いという問題もある。仮に未加入なら建設業許可しないことになれば、「現場が動かない」との声もあり、慎重な検討が必要となる。
経営事項審査では、現在、雇用保険と健康保険・厚生年金保険が未加入の場合、W点(社会性など)がそれぞれ30点減点され、総合評定値では86点の減点となる。保険未加入対策として、どの程度の減点が妥当かという課題がある。そもそも、経審が保険未加入対策でどの程度役割を担うべきかという点からの検討が必要になるとみられる。
同検討会の委員は次のとおり(敬称略)。
▽蟹澤宏剛(芝浦工大教授)▽阿部正樹(日本空調衛生工事業協会生産システム委員会主査)▽伊藤孝(全国建設業協会人材確保対策委員会委員長)▽内山聖(建設産業専門団体連合会副会長)▽山下雅己(日本建設業連合会人材確保・育成専門部会長)▽原洋二(日本電設工業協会人材委員会副委員長)▽高橋義次(全国建設労働組合総連合賃金対策部長)▽山田栄治(日本建設産業職員労働組合協議会議長)。
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