国土交通省は、従業員を社会保険に加入させないことで経費を削減している「保険未加入企業」の排除策を検討する一環で、保険加入が進まない要因を元請や下請企業に調査、分析した結果をまとめた。下請の保険加入を元請が確認・指導する制度上の仕組みがないことに加え、下請側にも保険料の事業主負担の重さや技能労働者の手取り重視志向など保険加入を妨げる要因があることがあらためて浮き彫りになった。行政側が保険加入状況の実態を把握していないことも要因に挙げた。
調査結果によると、元請、下請とも、受注競争が激化する中で工事の利益を確保することを優先せざるを得ず、保険の未加入が生じていると指摘した。さらに元請の企業間では従業員の保険未加入はそれほど深刻化しておらず、「社会保険は下請内の雇用主と従業員間の問題」と認識する元請も多かった。そうした状況下で、下請の保険加入状況を元請が確認・指導する制度上の仕組みもなく、下請企業の保険加入状態が改善していないと国交省は分析している。
下請企業については、保険未加入が起きる要因を事業主と従業員の両方の視点で分析。事業主の視点では、▽保険料の事業主負担が重い▽手取り金額を高くすることで技能労働者を確保▽保険加入の義務を知らない▽零細企業では保険の手続きに精通した従業員がいない-などを理由に保険の未加入があるとした。従業員の視点では、将来の保障より日々の手取りを重視する志向があり、特に中高年の職人には、保険に加入するメリットがないとの認識があることなどが保険加入を妨げる要因にもなっていると分析している。さらに行政側の課題として、保険加入状況を行政機関が把握していないことや、未加入事業所を発見しても継続的な指導が行われず、建設産業部局と社会保険部局間の連携も取れていないことなども指摘された。
国交省は、今回の調査と分析結果を、25日に開かれた有識者会議「社会保険未加入対策の具体化に関する検討会」(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)に報告した。今後、これらの結果を参考に、特定建設業者が施工体制台帳や再下請通知書、作業員名簿などを使って下請の保険加入状況を確認する仕組みを新たに設ける案など、保険未加入企業の具体的な排除策を検討していくことになる。
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