エレベーターの安全対策を強化する改正建築基準法施行令が28日施行される。新設エレベーターを対象に、地震や誤作動に対する安全装置の設置、メンテナンスに必要な技術情報の開示などが新たに義務付けられる。地震時の閉じ込め事故や、扉が開いたままかごが動く事故が頻発したのを受けた再発防止策だが、業界には「安全確保はまだ緒に就いたばかり」との見方も多い。
改正施行令では、地震の初期微動を感知して自動的に最寄り階に停止させる「地震時管制運転装置」の設置のほか、扉が開いた状態でかごが動くのを防ぐ制御装置やブレーキを二重化した「戸開走行保護装置」の大臣認定取得、保守管理に必要な情報開示などが求められる。安全対策の強化は、05年の千葉県北西部地震の際に多発した閉じこめ事故や、06年に東京都港区のマンションで扉が開いたままかごが動き利用者が死亡した事故などが背景になっている。だが、日本エレベータ協会(エレ協)の萩中弘行専務理事は「これはパーフェクトではない」と指摘する。機械の安全規格として国際標準に近づいたものの、まだ不十分な点が多いという。
06年の死亡事故の原因究明と対策検討を目的に今年2月、社会資本整備審議会(国土交通相の諮問機関)の建築分科会建築物等事故・災害対策部会に設置された「昇降機等事故対策委員会」は今月8日、事故機の設計上の欠陥と保守管理業者の技術情報不足などを指摘した報告書をまとめた。報告書は、保守管理技術向上のための製造業者と保守管理業者の協力体制構築や建物の所有者・管理者が適切な保守管理と業者選定を行うためのガイドライン整備などを求めた。
同委員会の調査では、大手メーカー系の保守会社と違い、製造部門を持たない「独立系」保守管理会社の間では、技術者の教育体制にばらつきがあることも明らかになった。エレ協の江崎英二会長(日本オーチス・エレベータ社長)は「安全はメーカーとメンテナンス会社だけでは守りきれない」と強調。所有者、製造者、保守管理者の関係を再構築し、それぞれの義務と責任や契約関係を明確にすることや、利用者の安全意識を高めることが大きな課題だと指摘している。
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