天井部分に開けた工事用の穴をふさいでいないため、火災発生時、階上の部屋に炎が噴き上がる恐れのある公共賃貸住宅が全国で536棟(1034戸)あることが、国土交通省の調査でわかった。大阪府吹田市で昨年起きた火災の延焼原因が本来ふさぐべき穴だったことから、各地の約8千棟を緊急調査したところ、6.8%で同様の穴がみつかった。同省は「手抜き工事」とみているほか、氷山の一角の可能性もあるとして、近く、都道府県に再調査と穴の補修を要請する。
国交省などによると、穴は直径や幅が約15センチの円形や四角形。各階の角部屋付近の天井に開けられ、そこに墨の付いた糸を垂らして傾きなどを調べる。確認後はモルタルでふさぎ、天井板などで覆われる。穴は居住者からは見えないが、開いたままだと、火災が起きた場合、空気の流れの変化で炎が大きくなる恐れがある。昨年6月、吹田市の府営住宅で1人が死亡した火事では、4階から出火し、穴から炎が伝わって真上の部屋に燃え広がった。
同省は翌月、緊急調査を開始。10月末までに、調査しやすい空き部屋のある7923棟を調べ、536棟で穴を発見した。都道府県別の割合をみると、奈良19.3%、山形18.8%、大阪16.5%――の順。埼玉や神奈川など13県では見つからなかったという。
同省住宅総合整備課は「業者の手抜き工事と言わざるを得ない。自治体も引き渡し時に確認すべきだった」とした上で、「入居中の部屋や民間のマンションなどにも同じ危険性はある」とみている。このため、同省は改めて都道府県に本格調査と穴をふさぐことを呼びかける方針だ。補修費用については「業者が負うべきだと考えるが、自治体が負担するケースも多いと思う」としている。(上田雅文)
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防火対策に詳しい東京理科大学の菅原進一教授(建築防災学)の話 業者にも自治体にも、ずさんな手抜きがあったと言われても仕方がない。火災では、穴の有無で延焼程度はかなり違ってくる。防災上、民間マンションを含め、早急に本格的な調査をし、修復すべきだ。
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