6000人を超す犠牲者を出し、国内では戦後最大の自然災害となった95年の阪神・淡路大震災から17日で15年を迎えた。復興した神戸の街並みからはもはや、被害のつめ跡を感じることは難しく、横倒しになった高速道路や、火災に焼き尽くされた密集市街地など地震直後の風景を想像するのも困難だ。だが、迅速な復旧・復興の陰には、多くの建設業関係者の努力と苦労がある。公共事業の大幅削減や景気低迷による市場縮小にあえぐ建設業界。業界の衰退で人や技術が失われるようなことになれば、災害列島に暮らす国民の安全・安心も危うくなるとの懸念も出ている。
阪神大震災の当時に日本建設業団体連合会(日建連)がまとめた記録によると、95年1月17日の地震発生から、同月末までの2週間で、日建連の会員各社が被災地に派遣した人員は、協力会社を含め延べ16万人。建設機械・車両は8000台を超えた。提供した救援物資は仮設トイレ約2200棟、飲料水約57万リットル、ビニールシート約26万枚に及んだ。当時の野坂浩賢建設相は、18日には日建連など建設関係9団体に復旧・救援への協力を要請。業界側も、人命救助や応急仮設住宅の供給、ライフラインの復旧に向けた建機・資材調達、労力の提供などに直ちに対応できる体制を整えた。道路が寸断されたため、航路で必要な資材や救援物資を輸送。全国の支社からも続々と応援部隊が入り、24時間体制で早期復旧に務めた。
震災復旧の技術やノウハウは建設業界に蓄積され、その後の災害でも生かされている。その一方で、危険を指摘されながら木造密集市街地の解消や、旧耐震基準で建てられたビルや住宅の耐震化、橋梁などのインフラの補強といった対策は完全ではない。先に厚生労働省が発表した全国の病院の耐震化率は56・2%にとどまった。
鳩山政権は、「コンクリートから人へ」との政策理念を掲げ、公共事業の大幅削減に乗りだした。市場縮小で建設業界が苦境に立たされている中、災害時の応急復旧などに大きな支障が出かねないとの心配も高まってきた。地震ばかりでなく、水害や土砂災害などが多発する災害列島で、国民の安全・安心をどう確保していくのか。建設業の存在意義や社会に果たす役割を、あらためて認識する必要がありそうだ。
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