Archive for » 3月 5th, 2010«

環境省が2007~09年、有害重金属カドミウムについて、汚染された土壌から生産された作物の濃度を調べた結果を、カドミウムの安全基準の設置を検討していた厚生労働相の諮問機関「薬事・食品衛生審議会」に伝えていなかったことが、朝日新聞の調べでわかった。調査結果では小麦やホウレン草、ナスなど10品目で国際規格の安全基準を上回っていたが、審議会ではこれらの作物に対する基準の設置が見送られた。

 日本ではコメだけにカドミウムの安全基準があり、基準を上回ると焼却処分されるが、コメ以外の畑作物には流通や生産に規制がない。同審議会の元委員は「調査結果が報告されていれば、基準設置を見送った結論が変わっていた可能性がある」と指摘している。環境省は調査結果を公表していない。

 この調査は「畑作物等指定要件検討基礎調査」で、国内の安全基準が設定された場合に必要なデータ収集として環境省が実施した初の全国調査。07年6月と08年5月、同省土壌環境課長名で各都道府県に調査への協力を依頼し、09年3月までにとりまとめた。

 朝日新聞は各都道府県への情報公開請求や取材で、調査に協力した25道府県分のデータを集め、農業試験場で実験的に栽培する作物などを調査対象にした9道府県分を除いた16府県分(54品目計1619点)について国際基準と照合。その結果、国際規格のある30品目計1252点中、10品目計165点(13%)で安全基準を超えた。一部地域の作物からは、最大値で国際基準の6倍以上のカドミウムが検出された。直ちに健康被害を引き起こすとされる値ではないが、これらの畑作物は市場に流通したり、農家が自家消費したりしている。基準を超えた作物が検出された複数の自治体は、朝日新聞の取材に対し、採取地にはカドミウムを廃水や大気中に排出する旧鉱山、製錬工場近くの畑を含むと答えた。

 国際規格の安全基準は、世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の合同食品規格委員会が06年までに、コメを含む穀類や野菜など主な作物の種類ごとに定めた。日本を含む世界貿易機関(WTO)加盟国は協定で、原則従うこととされているが、強制力はなく、各国の取り組みに委ねられている。

 同審議会に設けられた食品衛生分科会の食品規格部会は08年7月~09年10月、コメ以外の作物に安全基準を設けるかどうか計4回議論した。その結果、「カドミウム摂取量は健康被害を起こす量を十分下回っている」と判断。コメ以外の作物は、コメに比べてカドミウム摂取量が少ないことなども根拠に基準を設けず、3~5年後に再検討するとの結論に達した。

 環境省は同審議会にオブザーバーとして参加。調査を担当した職員は審議会に出席し、コメに関して同省の取り組みなどを説明していた。08年3月と09年3月に調査結果を得ていたが、部会には伝えていなかった。

 環境省土壌環境課は「調査は、畑作物の国内基準が設けられたことを想定して対策を検討する材料を集める目的で、基準設定の検討材料にはならないと考えた。審議会では基準設定が見送られたため、調査結果は提出しなかった」と説明。同審議会の事務局がある厚労省食品安全部基準審査課の担当者は「国内の畑全体の汚染実態を反映したものではないが、幅広い情報をもとに審議を尽くすためにも報告してほしかった」としている。(藤田さつき、宮崎勇作、村上英樹)

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 〈カドミウム〉自然界にごく微量存在する重金属で、大半は亜鉛鉱石などとともに産出される。ニッケル・カドミウム(ニッカド)電池の電極や、はんだ、顔料、合金、半導体の原料などに使われる。日本は世界有数の輸入・生産国で07年は輸入約1500トン、生産量約2千トン。鉱石の製錬過程で出た廃水や降灰が土壌汚染の原因と指摘され、高濃度に含む食品を長期間食べ続けると、腎臓の機能障害を起こす。カルシウムやたんぱく質が尿から排出され、悪化すると骨がもろくなり、イタイイタイ病の原因となる。 

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 政府は5日、法人による悪質な不法投棄の罰金を現行の1億円以下から3億円以下に引き上げる厳罰化を柱とする廃棄物処理法改正案を閣議決定した。今国会に提出し、公布後1年以内の施行を目指す。

 産業廃棄物を積み上げて放置したりすることを防ぐため、法人が事業所と別の場所に廃棄物を保管する場合は、都道府県知事への事前届け出を義務付けた。

 また、不適正な廃棄物処理を土地所有者らが発見した場合には、速やかに知事や市町村長に通報する努力義務を設けた。

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非鉄金属大手が「都市鉱山」と呼ばれる廃家電などに含まれるレアメタル(希少金属)を回収・再利用するリサイクル事業を強化している。三菱マテリアルがレアメタルの一種であるレアアース(希土類)回収事業への参入を目指すほか、三井金属やDOWAホールディングスなどもレアメタル回収を増強。各社とも“発掘”に懸命だ。省エネ家電やハイブリッド車(HV)に欠かせないレアメタルは世界的に争奪戦の激化が確実視される一方で、日本の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する埋蔵量を持つだけに、「宝の山」を生かし切れるかが日本の産業競争力の鍵を握る。

 ◆HV用など安定調達

 三菱マテはパナソニックとの合弁会社「パナソニックエコテクノロジー関東」(茨城県稲敷市)で、使用済みエアコンの圧縮機からレアアースを取り出す実証試験を始め、2014年までに事業化したい考えだ。レアアースはHVや電気自動車(EV)のモーター用磁石などに使われる。レアアースの産出は中国が世界の9割以上を握るが、中国は輸出抑制に傾いており、将来的に需給逼迫(ひっぱく)の懸念もあるだけに、同社は「安定調達につなげたい」と意気込む。

 三井金属はHV用などのニッケル水素電池からレアメタルを回収・再利用する事業を増強する。電池処理量を現在の月数十キログラムから4~5年後には10トン規模まで引き上げる方針だ。11年度をめどに使用済みリチウムイオン電池からリチウムなどを取り出す事業を始めるのが日鉱金属。子会社の日鉱敦賀リサイクル(福井県敦賀市)内に実証プラントを建設中だ。リチウムイオン電池は現在の携帯電話やノートパソコン向けだけでなく、HVやEV用途も増える見通し。DOWAホールディングスも傘下の小坂製錬が運営する小坂製錬所(秋田県小坂町)で使用済み家電や携帯電話から金、銅、レアメタルなど約20種類の金属を回収しており、その対象を増やすことも検討している。

 ◆ほぼ全量輸入頼み

 レアメタルは産出国がロシアや中国、アフリカなどに偏り、日本はほぼ全量を輸入に頼る。その調達には産出国の政情や資源政策に左右される不安はぬぐえないため、日本企業は海外鉱山の開発や権益確保などを加速。政府も石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と企業が鉱山に共同出資できるよう法改正し企業を後押しする構えだ。ただ、資源の「爆食国」中国などライバルも多く、権益取得は簡単ではない。

 一方、物質・材料研究機構によると、国内都市鉱山のレアメタル埋蔵量はインジウムが世界埋蔵量の61%、リチウムは世界の年間消費量の7倍以上に相当する。レアメタルは日本のハイテク製品に不可欠な原料だけに、都市鉱山の活用は待ったなしだ。(本田誠)

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 ≪野村総合研究所社会システムコンサルティング部コンサルタントの駒村和彦氏≫

 ■苦戦する海外権益獲得戦

 近年、資源メジャーの寡占化などで調達不安が高まっている。特に今後の製造業に不可欠なレアメタルでこの傾向が顕著だ。日本企業は資源権益の獲得に動いているが、苦戦を強いられている。

 その要因は主に2つ。1つは資源の大量消費国の座を中国に奪われたこと。従来、日本は大量消費国として長期買い取りを確約することで資源開発に参加して権益取得に結びつけてきたが、今やこうした優位性は見いだしがたい状況にある。

 もう1つは資金面での日本の魅力が薄れたこと。資源開発には膨大な資金が必要だが、日本だけでなく中国などが資金の出し手として浮上し、資源国との交渉の主導権が握りにくくなっている。

 調達不安の解消には、レアメタルに代わる資源の開発、省資源技術の開発、都市鉱山の活用が必要になる。都市鉱山については、金属を効率的に抽出する技術の開発や使用済み製品の回収網の整備などが課題だ。

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