一般永住者が過去10年で5倍に急増した背景には、永住者資格を取得するために必要な日本での在留期間を「原則20年」から半分に短縮した平成10年の入管行政の方針変更が、主な原因と指摘されている。
法務省入国管理局によると、一般永住者は10年末では約9万3千人だったが、12年末に約14万5千人に急増。16年末に30万人を突破し、20年末に49万人を超えた。10年間で5倍に増えたことになる。特に中国人は約3万1千人から約14万2千人と4倍を超える勢いで増えている。
背景には10年2月、永住者の在留資格を与える要件を大幅に緩和したことがある。以前は原則20年の在日歴が必要だったが、ガイドラインで半分の10年と明記。大幅な要件緩和は法務省と入管当局の裁量で行われ、国会審議や政策審議会などでの議論は全くなかったという。
永住外国人への地方参政権(選挙権)の付与の是非が大きな争点となる中、外国人政策をめぐる国益を踏まえた議論が乏しいまま、行政裁量によって一般永住者の急増を招いた問題は国会でも取り上げられた。
在日歴の要件をめぐっては「専門知識や技術を持つ外国人」について在留歴を5年とする、さらなる緩和方針が法務省で検討されている。早ければ来年の国会で入管法の改正案を提出する予定で、今年1月、法相の私的懇談会「第5次出入国管理政策懇談会」も同様の報告書を提出するなど、一層の緩和の方向が打ち出されている。
国家基本問題研究所の西岡力・企画委員は「永住許可の安易な緩和は国家の基本を揺るがす重大問題。永住許可を得ると、無期限かつ制限のない在留が認められ、わが国の意思決定がゆがめられたり、極端な場合はスパイ活動や破壊活動も可能になる」と懸念する。
また、この問題を国会で取り上げた稲田朋美衆院議員は「国会の議論もなく、一行政機関の裁量判断でこうした要件緩和が行われるのは非常に問題」と指摘。「急増中の永住外国人に地方参政権を与えるのも、主権国家の形を変更させる問題だ」と憂慮を示す。
ノンフィクション作家の関岡英之氏は「北京五輪の聖火リレーで全国の中国人が長野に集結した政治的示威が印象的なだけに、中国人の急増は気がかりだ。未来を見据え、国益に立った議論が喫緊の課題だ」と警鐘を鳴らしている。(安藤慶太)
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