「シーラーを塗らないで仕上げ塗りできる材料なんて本当に大丈夫なのか」──。現場に入る前の心境をこう振り返るのは、伊藤左官工業(東京都調布市)社長の伊藤敏夫さんだ。
施工現場は、神奈川県鎌倉市のM邸。塗り壁を施工した際、ほぼすべての内壁面にアトピッコハウス(神奈川県鎌倉市)の塗り壁材「パーフェクトウォール カオリンの壁」を使用した。同製品は、紙や布でできた「エコクロス」と同等の価格の塗り壁材だ。
パーフェクトウォール カオリンの壁は、アトピッコハウスが2008年に発売した、アク止め効果が高い下塗り材「下塗り革命」をベースに改良し、仕上げ材として開発した。一般的な塗り壁で求められるアク止めの下塗り材施工やシーラー処理が要らず、工程は仕上げ塗り1回で済む。
パテ処理もできる
作業手順は以下の通り。下地材のジョイントや合板部分などにパテ処理をした後、12時間ほど養生。次に、下こすりに続けて仕上げ塗りができる。仕上げ塗りはコテでパターンを付けながら塗り進める。リフォームの場合は、クロスの上からでも施工が可能だ。パテ処理・アク止め・下こすり・仕上げ塗りの全工程でパーフェクトウォール カオリンの壁だけを使う。
伊藤さんは「一つの材料でどんどん塗り進められる製品だ。職人が一日に塗れる面積が広く、作業性が高い」と評価する。
M邸は、30歳代の夫婦と子ども1人の3人家族の新築住宅。建て主の奥さんが塗り壁を希望していた。「ヨーロッパ風の家にあこがれがあり、絶対に塗り壁にしたかった。ところが予算が合わず、エコクロスに決まっていたところに、パーフェクトウォールの提案を受けた。迷わずお願いした」という。
アトピッコハウス社長の後藤坂さんは「一般的な塗り壁材の材工費と比べて、約43%のコストダウンができる。これは、材料費よりも施工費の削減分が大きい。塗り壁にしたくてもコストがネックになって採用できなかったユーザーに使ってもらえると思う」と話す。
一般的な塗り壁の材工価格は3500円/m2。パーフェクトウォール カオリンの壁は2000円/m2に抑えた。
「どんな材料もまず、クセをつかんでから施工する必要がある。この製品は乾きが速いため、広い壁全体に塗り付けた後ではパターンを付けることができない。また、標準塗り厚を超えて厚く塗り過ぎてしまうと表面が乾いて材料を引っ張ってしまうため、一気に塗り進める必要がある」。伊藤さんは、施工上の注意点をこうアドバイスする。
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