国土交通省は19日、技術者制度検討会(座長・小澤一雅東大大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授)の初会合を開き、今後の検討フレームを提示した。当面の課題として、監理技術者資格者証交付と監理技術者義務講習の廃止に伴う方向性を検討して2010年内に案をまとめる。11年1月以降、技術者の要件や技術者個人への罰則のあり方、現場の専任制、新しい分野への対応などを、来春をめどに検討する。
検討会では、建設業界を取り巻く厳しい受注環境や担い手となる技術者の世代交代と労働条件の悪化、建設産業の魅力低下を議論の前提に置く。その上で、全体の検討の目的として、適正な施工・品質の確保を設定する。
技術力の確保・維持向上による確実な施工確保の視点で、監理技術者・主任技術者が果たす役割と資格のあり方、資質・技術力の維持向上のための監理技術者講習に代わる方策といった技術者の要件を検討する。
会合では、「建設業法上の28業種の分類も検討するのか」といった声に対し、小澤座長は「28業種は建設業許可と密接で、本質はその点にある」と指摘した。建設業許可を受けようとする企業は、業種ごとの法定資格を持つ技術者を雇用している必要があるため、小澤座長の発言は技術者の要件を検討することが建設業許可を議論することにもなることを意味していると思われる。
不良不適格業者を排除し、優れた企業が生き残るための環境整備を目的に、監理技術者資格者証の交付に代わる方策や下請業者の主任技術者も含めた表示・確認方法の必要性を検討課題とする。不正を防止するため、不正受験者への受験停止期間の導入や虚偽表示に対するペナルティーの必要性も検討し、適正な技術者であることを発注者や許可行政庁が確認できる仕組みを構築する考え。
さらには、優れた企業が生き残る環境整備として、業界の経営環境の変化に対応した運用の視点での検討を進める。監理技術者の専任が必要な工事金額が土木などで2500万円、建築で5000万円となっている金額設定の妥当性、専任を必要としない期間の点検なども議論する。
社会変化に応じた新しい技術分野への技術者制度の対応も論点になるほか、会合では海外展開を視点とした仕組みの検討の必要性を指摘する声も上がった。
年内の会合では、監理技術者資格者証の交付と講習に代わるあり方を議論する予定。国交省が建設業団体などにアンケートした結果、全体としては技術者の適正性のチェックが必要という意見が大勢を占めたものの、「費用を下げるべき」「民間資格を含めた統一的なカードを作成する方法もある」といった意見があった。講習についても、最低限の内容として技術者の質を維持する仕組みの必要性を理解する声が上がった。
建設業法では、一定規模以上の工事で特定建設業者に監理技術者の設置を義務付けており、監理技術者の要件として資格者証の携帯と講習の受講を設けている。法定の国家資格(一級)や一定の実務経験などがあれば、監理技術者として現場での業務が可能になる。
検討会メンバーは次のとおり。
▽小澤一雅東大大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授=座長▽遠藤和義工学院大工学部教授▽大橋弘東大大学院経済学研究科准教授▽高野伸栄北海道大大学院工学研究科准教授▽畠中薫里政策研究大学院大学准教授▽深尾精一首都大東京都市環境学部教授▽保田眞紀子弁護士。
【供給過剰構造是正へ真剣な議論必要な時/大森建流審】
また、国交省の大森雅夫官房建設流通政策審議官は、19日の技術者制度検討会で、全国建設業協会のブロック会議で過剰供給構造の是正が議題になったことを紹介した上で、「国交省として何ができるか、真剣な議論が必要だと思っている」と語った。「建設業の大事な商品である技術をどうするか、技術者制度の問題をまとめたい」としており、技術と経営に優れた企業の要素の一つとして技術者のあり方という視点があるとの考えを示したとみられる。
会合で大森建流審は、「直接的な出来事は事業仕分けで監理技術者資格者証交付が廃止、義務としての講習廃止となったことであり、法律改正をもって対応しなければならない」と検討会設置の理由を説明しつつ、全建のブロック会議で建設業における過剰供給構造の是正が議題に挙がり、「経営が大変という切実な声を聞いた」と紹介。「国交省として何ができるか、真剣な議論が必要」とした上で、「常々言っているが、技術と経営に優れた企業が生き残ることが重要だ」と改めて語り、「大事な商品としての技術をどうするか、技術者制度の問題を固めたい」と説明した。
検討会の座長に就いた小澤一雅東大大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授は、「建設業の発展や良好で質の高い建設サービスの提供を目的としている建設業法の中で、技術者制度は根幹をなしており、質の高い技術者をどう維持するかが求められている」とした。その上で、「社会は大きく変化しており、建設生産システムや市場の動向など将来を見据え、技術者制度のあるべき姿を考える時にきている」と、社会変化の中での良質な技術者の維持・確保に向けた制度を検討する考えを示した。
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